人事評価におけるコメント事例を紹介!人事評価に悩んでいる人は必見!

人事評価における評価コメント例

人事評価の実施にあたり、「部下にどのようなフィードバックをすればいいのだろうか?」「いつも似たようなフィードバックになってしまう」「評価者として何を意識すればいいのだろうか?」という評価者側の声を聞くことがあります。

人事評価は数字(実績)による点数評価だけでなく、評価者が被評価者に対してどのようにフィードバック(コメント)をするのかは重要です。

そこで今回は、評価者がどのような点に着目し、部下に対してフィードバックしていくべきかについて、説明していきます。今回は社歴・年齢を重ねた中堅社員、課長職への評価を例に考えていきましょう。

人事評価に入る前に

まずは、人事評価の目的を理解しましょう。最初に行うことは、上司と部下の双方が人事評価の目的を明確に理解することです。

人事評価とは「部下の育成」と「組織の活性化」を目的に、経営者及び経営陣が、各職位に応じた行動指針を示し、職場のミーティングや上司との面談、評価結果の開示などの仕組みを通じて実施されるプロセスを指します。

人事評価の取り組みにおけるメリット

人事評価の取り組みの狙い

人事評価を行うことで、以下のようなメリットを得ることが出来ます。

  • 果たすべき役割を自覚した職務遂行
  • 自らの気付きと効果的な助言・指導
  • コミュニケーションの充実と働きがいのある職場づくり
  • 能力及び実績に基づく人事管理の徹底

各メリットを頭に入れた上で人事評価に臨みましょう。

果たすべき役割を自覚した職務遂行

上司は部下に対して、各職位に応じた遂行すべき行動内容を明確に示し、従業員一人ひとりが組織目標を共有した上で、自身の目標を設定することにより、自覚的で自律的かつ能動的な職務遂行を目指します。

メリット

企業が職位に応じて従業員に求める職務行動を、全ての従業員が理解するとともに、組織目標を職場の全員で共有して自身の役割を認識することで、自ら主体性を持ち、職場が一体となって、仕事を進めやすくします。

自らの気付きと効果的な助言・指導

日々の職務や業務の達成状況を自ら振り返るとともに、上司が部下の職務行動や業務の進捗状況を的確に把握することで、本人が自身の強みや改善点に気付き、上司が効果的な助言や指導を行います。

メリット

職務行動や業務の達成状況を振り返ることで、自らの強みと弱みに気付くとともに、上司の効果的なアドバイスなどにより、従業員として一層の成⾧を目指します。

コミュニケーションの充実と働きがいのある職場づくり

従業員同士や上司と部下で仕事の進め方や達成状況等について話し合うことにより、日々のコミュニケーションが充実するとともに、上司がリーダーシップを発揮し、従業員がチームワークで結ばれた働きがいのある職場づくりを進めます。

メリット

コミュニケーションが充実することで、職場内のチームワークを強めて、安心して仕事のできる、働きがいのある職場づくりを進めます。

能力及び実績に基づく人事管理の徹底

従業員一人ひとりが発揮した行動及び挙げた実績に基づく評価を行い、その結果を給与、権限、その他あらゆる人事施策の基礎として活用することにより、さらに組織の活性化に資する人事制度とします。

メリット

評価基準を明示し、これらに基づく評価結果をさまざまな場面で活用することで、より努力し成果を出した従業員が正当に評価される人事制度となり、評価者・被評価者の双方のモチベーション向上につながります。

課長職に対する評価コメントの例

課長職に対する評価コメントの例

それでは具体的に課長職の従業員に対する評価コメントの例を見ていきましょう。

ここでは、課長自身の自己評価(一次評価者)、上司である部長の評価(二次評価者)、その上の本部長の評価(三次評価者)、という3つの階層があるイメージをしてください。

階層イメージ
役職階層
本部長三次評価者
部長二次評価者
課長自己評価(一次評価者)

各項目について、どのようなコメントをしているのか見ていきます。

項目ごとのコメントの例

各項目ごとのコメントの例を記載します。

  1. 企画・調整力に関して
  2. 判断力に関して
  3. コミュニケーションに関して
  4. 部下育成力に関して
  5. 総合評価に関して

今回は「業績評価」ではなく「行動評価」の例を記載します。定義については各企業により異なりますので、注意してください。

❶企画・調整力に関して

「企画・調整力」とは、会社の目標に合致し、目標達成や課題解決に向けて効果的かつ実現可能な企画を立案し、関係者と円滑な交渉・調整ができる能力を指します。

評価の視点は、広範な視野を持ち、会社の目標に適した企画を立案していたか、また、全体の利益を優先し(全体最適を追求するために)、関係者と円滑な交渉・調整を行っていたかです。

自己評価のコメントの例

部署の従業員からの様々な意見を踏まえ「人材育成基本方針」を新たに策定しました。一部改定のみに留まり大幅改定とまではいきませんでしたが、他部署など関係者とうまく調整を図り期日までに円滑に策定できたことから「S」評価と自己評価しました。

二次評価者のコメントの例

期日内に指示を受けていた「人材育成基本方針」を策定した点は評価できます。

三次評価者のコメントの例

「人材育成基本方針」を自部署だけでなく他部署にも働きかけて策定した点を評価します。今後は策定後の運用に関して、各部署の担当者が理解し、実行しやすいように工夫・改良を重ねてください。

❷判断力に関して

「判断力」とは、組織の目標や業務内容を熟知し、状況に応じた適切な判断を行う能力を指します。

着眼点は、部下の判断に頼らず、または上司に全面的に判断を預けることなく、適切な判断をしていたか、目先の利益や一時的な利益にとらわれず、中・長期的な視点から総合的な判断をしていたかです。

自己評価のコメントの例

施策の決定に関しては、自分のなかで適切な判断がほとんどできず、上司の判断に頼りすぎた場面が多かったので「B」評価と自己評価しました。一方で、新規事業の決定の場面においては、今後の市場全体の方向性や全体最適の考えのもと、中長期的な視点から判断できたので「S」評価と自己評価しました。

二次評価者のコメントの例

施策の決定に関して、判断に慎重になることは悪いことではありませんが、ビジネスにおいては判断力の速度が求められます。判断に迷うということは、熟知が足りないということだと理解し、情報のインプットと理解に努めてください。新規事業の決定に関して、事業計画書に基づいて話を進行していた点を評価します。

三次評価者のコメントの例

上司に助言を仰ぐ状態から、上司に提案する状態に進化することで、顧客に対しても同様に提案できるようになります。逆を言えば、社内でできないことは社外でもできないということです。新規事業に関しては、よく考えて資料を用意しているように感じましたが、競合他社でも考え得る内容であるため、より差別化を図った提案を期待します。

❸コミュニケーションに関して

「コミュニケーション」とは、報告・連絡・相談を積極的に図り、円滑に業務を進める能力を指します。着眼点は、職場内でコミュニケーションを促進する仕組み、雰囲気作りを行っていたか、上司や部下、関係部署と時機を得て接触し、必要な情報を収集、提供、共有していたかです。

自己評価のコメントの例

これまで全く課内会議がなかったものを、月1回ミーティングを開くこととしました。その中で各々の業務スケジュールの他、最近の競合他社や業界の動向などを確認するなど情報共有に努めました。また、従業員全員が最低月1回休暇取得できるよう必要に応じて業務分担を図り円滑に進めたので「S」評価と自己評価しました。

二次評価者のコメントの例

新たに月1回ミーティングを開き、コミュニケーションを促進する取り組みは高く評価します。その中で、競合他社や業界の動向を確認し合うなども非常に良い取り組みです。また、昨年度に比べ課としての有休取得率の向上はこのミーティングの成果と言えるかもしれませんね。

三次評価者のコメントの例

月1回ミーティングを開くことは、組織内のコミュニケーションを促進する取り組みとして高く評価します。次年度においても継続して取り組んでください。

❹部下育成力に関して

「部下育成力」とは、部下の能力を公平・適切に把握し、その資質を向上させる能力を指します。

着眼点は、研修の参加や自己研鑽を促すなど、能力開発の働きかけを行っていたか、人事評価に基づき、部下一人ひとりの改善・努力が必要なところなどを把握し、指導・助言を行っていたか、です。

自己評価のコメントの例

私たちに設けていただいている研修会の時間をより有効活用していくため、「何のために研修を実施しているのか」という部分を、今一度部下と話し合いました。人事評価は例年と比較すると、部下に話しかける機会を意図的に増やしたこともあり、部下が身構えずリラックスした状態で個別面談を実施することができました。

二次評価者のコメントの例

前年度に比べ、研修参加率が向上したことは部下の意欲的な姿勢のみならず、一次評価者から働きかけを行ったことが少なからず影響していると思われます。人事評価については、部下一人ひとり丁寧に指導・助言を行ったことは部下の人事評価記録書からも確認できます。

三次評価者のコメントの例

上司の行動や発言は、上司が思っている以上に部下は見ています。たった一言で部下の希望や期待を失わせる場合もあれば逆も然りであるということを念頭に置き、引き続き具体的な成果の数を増やせるように取り組んでください。

❺総合評価に関して

自己評価のコメントの例

自分のなかで、一定程度職責に応じた能力を標準レベルで発揮できたとは思いますが、総合的にはまだまだ力不足を感じています。今期の反省を踏まえ、次年度においては、部下のワーク・ライフ・バランスに配慮しながら全力で職務に取り組んでいきます。

二次評価者のコメント例

様々な課題が山積している中、新たに「人材育成基本方針」を策定するほか、月1回ミーティングを開催する取り組みは高く評価します。一方で、次年度においては、業務の見直しを図るなど部下の健康管理に留意し、ワーク・ライフ・バランスに配慮してください。

○○会議において、スムーズな進行や完成度の高い資料作成など、主担当として大きな力を発揮しました。□□のとりまとめについては、 当初予定した期限にはとりまとめられなかったものの、先方の都合による日程調整に困難を伴った中で行われたものであり、困難度を考慮すれば、期待された以上の成果を上げたと言えます。

三次評価者のコメント例

二次評価者のとおり、新たな取り組みについては高く評価したいが、今後新規業務の増加や様々な課題への取り組みが予想される中で、中長期的な視点を持って抜本的に業務を見直してください。

グループ長1年目でしたが、通年多い業務量を的確にこなし、誠実に能力が発揮されています。特に○○事業については、他社に先駆けた取り組みであり、全部署の業務の効率化に結びついたのは高く評価できます。積極的に課題に取り組み、他の社員からの信頼も厚いため、今後も引き続き更なる高みを目指して業務に取り組まれることを期待します。

一言メモ

各項目への評価コメントは、長ければ良いというものではありません。簡潔に分かりやすくコメントすることと、二次評価者と三次評価者は、それぞれ部下が記載したコメントに基づいて記載することが重要です。

評価者が注意すべき点

評価者が注意すべき点

評価者が注意すべき点として、以下の3点を記載します。

❶評価を下げる場合は、必ずコメントを記載する

二次評価者は、一次評価者の評価より評価を下げる場合はコメントの記載が必須です。

三次評価者も同様で、三次評価者は、二次評価者の評価より評価を下げる場合はコメントの記載が必須です。尚、評価を下げない場合は時間短縮のため、上司は各項目へのコメントの記載を省くこともできます。

❷人を評価することに対して、責任を持つ

人事評価制度は、上司が部下を指導育成するための重要なシステムです。部下の行動事実について、客観的に分析・評価し、本人の長所、短所を的確に把握するようにしてください。

また、部下の長所、持ち味を活かした指導育成策を検討し、実践することはもちろんですが、態度に問題があったり、能力を十分に発揮できていない部下に対しては、上司として責任を持ち指導に当たってください。

❸評価者は被評価者の指導観察記録をつける

評価の対象期間が長いと、実際に把握した事実があっても、評価をするときには忘れているといったことが多々起こります。被評価者は覚えているのに、評価者が評価するときには思い出すことができず、被評価者から「あの件はどう評価してくれましたか?」と説明を求められることもあります。そこで、把握した事実を忘れないよう、指導観察記録をつけるようにしてください。

一言メモ

人の記憶は曖昧なため、指導した内容や日々仕事で観察した行動を記録しておくことで、評価時に評価者自身も楽になります。事実に基づかない評価や曖昧な記憶に頼った評価では、被評価者の納得を得ることはできません。

評価者の守るべきルール

評価者は以下の8つのルールを守り、評価を実施することが求められます。

❶具体的事実に基づいて評価する

人事評価は、評価者自身が日常の考察によって得た被評価者に関する客観的な事実に基づいて実施します。事実を把握せずに、「彼はまじめだから大丈夫だろう。」といった推測や先入観で評価したり、不確実なうわさを鵜呑みにして評価したりすることのないようにしてください。

❷評価対象期間を遵守する

評価対象期間以外の事実は評価の対象外です。前年度までの傾向や過去の失敗に影響されることのないよう、評価対象期間内の行動事実のみをもって評価するようにしてください。

❸私的な人間関係を持ち込まない

親戚関係にある、先輩、後輩の仲である、近所づきあいがある、子供が世話になっているなど、私的な関係で評価を手加減することのないようにしてください。

❹プライベート評価対象外である

家庭等での出来事は対象外です。人事評価は、担当している仕事に関する能力や業績を評価するものです。評価対象は、職員としての行動や仕事の成果に限定されますので注意してください。

❺他の職場における可能性まで評価しない

能力評価は、現在担当している職務における能力・行動を評価します。他の職務に適性があると考えられる場合でも、現在担当している仕事で評価してください。

❻好き嫌いや性格で評価しない

自分とはウマが合う、扱いやすい、性格がよいなどでは能力評価をしないでください。相性や性格で評価してしまうと、能力評価ではなく人物評価になってしまいます。

❼属人的要素で評価しない

被評価者の信条、性別、年齢、学歴で評価することはやめてください。これらは仕事ぶりと関係ない要素のため、評価に対する不信や人権問題にもつながる可能性があります。

❽作為的評価はしない

評価のルールに従わず、自分勝手に評価の物差しを持ち出して評価したり、明確な根拠に欠けた評価をしたり、作為的な評価をすることは厳禁です。

こんな時どうする!?人事評価に関するQ&A

人事評価に関するQ&A

人事評価の実施にあたり、よくある質問とその回答を記載いたします。

Q.抽象的な目標しか立てられない場合はどうすればよいか?

A.業務内容等によって抽象的な内容にならざるを得ない場合でも、当期の業務遂行に当たっての重点事項、特に留意すべき事項等を明確にし、当期に意識を集中させるべきポイントを明確にします。この場合、期末に、当期の業務遂行状況を振り返って、結果的にどのような業務を成し遂げたのか、貢献ができたかなどを、振り返り型で評価する方法もあります。目標の「達成度」ではなく、業務実績そのものが「期待された役割」に適うものであったのかどうか、という観点からの評価になります。

Q.チーム単位で業務を遂行している場合はどうすればよいか?

A.チーム共通の目標とすることも考えられます。この場合でも、役割や貢献はそれぞれの被評価者で設定しましょう。なお、チーム全員で目標設定のためのミーティングを行い、被評価者一人ひとりの役割を明確化し、確認するグループ・ミーティングを行うことも考えられます。

Q.短期で成果が出せない業務はどうすればよいか?

A.中長期的な成果を意識しつつ、評価期間において到達すべき水準の目標を設定します。
(例)来年度に○○事業の見直しができるよう、○月末までに現行○○事業の評価資料を作成し課題を洗い出す。

Q.ルーティン業務はどのように設定すればよいか?

A.効率化や業務改善など当期の重点事項、留意事項に着目した目標を設定します。
(例)適正な予算執行となるよう、○月までに○○年度の執行内容について把握・分析し、問題点の抽出を行った上で、必要に応じて積算の見直しを行い、○○年度の概算要求に反映させる。

人事評価の評価コメントは簡潔に分かりやすく

被評価者が記載する自己評価と同様に評価者からのコメントも明確にわかりやすく書くことが重要です。どれだけ有益な内容であっても、相手に伝わらなければ評価されません。従業員数が増え、組織の階層が厚くなればなるほど、上司は部下の業務の詳細を把握しにくくなります。

そのため、最終評価者が内容を理解できるような文書作成を意識し、事実に基づいて情報で評価できるような人事評価制度の運用を行いましょう。

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