管理職に求められる「人材マネジメント」とは?具体的な方法や重要性を徹底解説

管理職に求められる「人材マネジメント」とは?

マネジメントの基盤を作るための良質なコミュニケーションや部下を活かすための効果的な業務マネジメントの重要性について、前回のコラムで述べてきました。

本章では、部下が能力を発揮し、成果を挙げるための「人材マネジメント」を深掘りします。

人材マネジメントに取り組む前に知っておくべきこと

人材マネジメントに取り組む前に知っておくべきこと

組織全体の方向性を捉え、中長期的な視点で将来の組織を支える人材を育成する「人材マネジメント」に取り組むことは、管理職の業務であり、重要な仕事です。また、短期的に見ても人材育成に取り組まなければ、部下のモチベーションが下がったり、その結果離職してしまうなど、現在の仕事の成果にも悪影響が出ます。

今回は「人材育成・成長支援」をテーマに、管理職に人材マネジメントの力を習得していただくことを目的に述べていきます。日常の業務に取り組む中で、チームとして更に成果を挙げるための部下の支援方法を各自考えていきましょう。

なぜ人材マネジメントが必要なのか

短期的に見れば、管理職や能力の高いメンバーが業務を担当することで、大概の物事は解決するかもしれません。しかし、それではいつまでたっても属人的な業務対応であり、管理職や一部のメンバーに業務が集中することで、疲弊していきます。

また、働き方改革の推進や少子高齢化の影響もあり、一人一人の能力を底上げし、チームとして仕事の成果を挙げていかなくては、今後企業が存続していくことも難しくなる場合もあります。しかしその上で、管理職の方にこのことをお伝えしても「目の前の業務に追われて、とても人材マネジメントにまで取り組む余裕がない」と仰る方が多いのが実情です。

確かに「人材マネジメント」と言うと、何か高度な内容を新たに実施しなければならないような気持ちになるのも分かります。しかし実際は、日々の業務において「部下の特性を理解して、部下に合わせた支援方法を考えて、部下の成長度合いに応じて支援する」という工夫ができれば、部下のやりがい・エンゲージメント(自発的な貢献意欲)を高め、部下一人一人の能力を底上げすることができるのです。

人材マネジメントは未来の組織づくりに重要な役割

「人材マネジメント」は、部下の新たな才能を開花させることができるやりがいのある仕事です。才能を開花させることができた部下は、自分の才能を見い出し、引き上げてくれた上司にとても感謝をすることでしょう。また、部下に様々な経験を積ませることにより、未来の組織を支える人材に成長させていくことができます。

部下の成長を支援するマネジメントとはどのようなマネジメントか

どのようなマネジメントが、部下のやりがい・エンゲージメントを高め、能力を底上げする「部下の成長を支援する」マネジメントなのかと、悩まれる管理職は多いでしょう。

部下の成長を支援するマネジメントとは、以下の2点を意識したマネジメントです。

  • 部下をよく知る(傾聴して能力・思考・志向・状況等を知った上で支援する)
    ⇒ 部下が業務に納得感とやりがいをもち、能力を発揮する
  • 部下の成長を褒め承認する
    ⇒部下を動機付けして、部下自身が次も目標達成しようと思う

部下の成長を支えるためには、能力や状況に合わせた支援・動機付けすると効果的です。まずは、普段から傾聴を心掛け、仕事に対する考え方や志向(キャリア)等を把握することが大切です。

◎部下と定期的に面談することも重要

部下と定期的に面談の機会を設けることも良いでしょう。その際には以下のようなことを尋ね、傾聴し、部下のことをよく知ることが重要です。

  1. 部下の能力(仕事の得意・不得意、好きな仕事・苦手な仕事、強み・弱み)
  2. 部下の思考(仕事に対する考え方、仕事の進め方)
  3. 部下の志向(キャリアに対する意識)
  4. 部下の状況(抱えている業務量・心身の不調・家庭の事情(育児・介護等))

「指導」と「支援」の違い。伴走するという考え方

部下の成長に必要なのは、「指導」だけではありません。特にZ世代には、「指導」だけでなく、「支援」の意識を持って接することが重要です。

理想の職場・上司像」に関する2011年と2021年のアンケートを比較したデータがあります。このデータによると、10年間で「理想の職場・上司像」について明らかな変化があったことが分かります。

「理想の職場・上司像」に関する2011年と2021年のアンケートを比較したデータ

理想の職場・上司像の2011年と2021年のアンケート

引用元:Z世代の新人・若手の育て方・生かし方(リクルート)

上司世代にとっては理想的だったと思われる要素(1つの目標の共有・鍛え合い・活気・厳しい指導・引っ張るリーダーシップ・情熱)の選択率が下がり、代わりに「個性の尊重・助け合い・一人ひとりへの丁寧な指導・ほめること・傾聴」を職場や上司に求める若者が増えています。従来は、上司から部下に正しい答えを教えて導く、いわゆる「指導」が多く行われてきたかもしれません。

これから求められるマネジメントでは、部下が自ら考えて物事を前に進め、能力を発揮できるように支える「支援」の観点も必要なのです。

部下の志向や将来の展望を理解した上で、業務の意義を説明したり、必要な能力・経験が身に着く業務を割り振ったりすることは、現在の業務に対して、よりやりがいを持たせるだけでなく、部下のキャリア形成支援にもつながります。現場の管理職には、目前の業務だけではなく、部下の将来を見据えたマネジメントも求められています。

マネジメントの際に意識すること
  1. 普段から傾聴を意識すること
  2. 部下の考えや自発的な言動を受け止めた上で支援すること
  3. 部下にとって響く言葉で声掛けして動機付けすること

業務を通じて部下を成長させる

業務を通じて部下を成長させる

人が仕事で成長するには、業務経験が何より重要であるということは、多くの方が実感されていることでしょう。しかし、「業務を通じた成長」において重要なのは、単に「業務に取り組む」こと自体と、その期間中の支援だけではありません。

人材育成の研究では、業務に取り組むことに加えて、以下の3点が人が業務を通じて成長するために必要な要素であると言われています。

  1. ストレッチ目標の設定
  2. 振り返り
  3. 職場メンバーの巻き込み

部下の「業務を通じた成長」には、業務中だけではなく、業務に取り組む前後、また環境整備面での支援が必要です。管理職の仕事は、「業務を通じた成長」について理解した上で、部下の成長を支援することです。

①ストレッチ目標の設定

1つ目は、ストレッチ目標(適度に挑戦的な目標)への取組です。努力しなくてもこなせる業務にいくら取り組んでも成長できません。「適度に挑戦的」とは、単に「仕事量を増やす」という意味ではありません。

業務の内容(業務の難易度や求められるスキル)がその人にとって挑戦的かという点に着目しましょう。部下の能力や目標よりも高すぎる目標設定は逆効果です。

また、上司が一方的に与えた目標では、部下は「腹落ち」せず、成長には結びつきません。目標設定は、部下の話をよく聞いた上で行い(傾聴)、またその際、業務の意義と部下への期待を正しく伝えることが重要です。

部下がストレッチ目標を達成するには、上司が思うより時間がかかる場合もありますが、業務上の期限を意識しつつ、進捗を見守りましょう。

目標設定に必要な指標
  • 検証可能性(達成したかどうかが客観的に判断できる)
  • 達成期限(「いずれ」は永遠に実現しない)

「いつまでに、何を達成する」を関連させて、目標を設定してください。

②振り返り

2つ目は、振り返りの実施です。ストレッチ目標に向けて取り組んだ後は、必ず振り返りを行い、目標に対する達成度合いを検証しましょう。 この際、まずは本人にも自己分析・自己評価してもらうことが必要です。

振り返りの結果に挙がった課題については、上司が一方的に対応策を考えるのではなく、部下本人にも対応策を考えさせましょう。その理由は、自分自身で答えを導き出すプロセスが、本人の行動変容、成長につながるからです。

振り返りの際にはPDCAサイクルを意識しましょう。

PDCAサイクル

1)経験し、2)振り返り、3)周囲からの助言を踏まえ、4)足りないスキル等について研修を受けたり情報収集をし、1)再び経験する・・・という「経験学習」のループが大切です。
これをPDCAサイクルとも言います。

業務が上手くいかなかった点に目が行きがちですが、上手くいった点についても、その理由や要因をしっかり分析してもらいましょう。この振り返りにより成功パターンを認識することが、本人のスキル上達、ノウハウ蓄積につながります。これは上司にとっても、部下の強み把握につながるという点で重要です。

振り返りを十分に行わない人の特徴

目標を設定しても、振り返りを十分に行わない人がいます。大きく分けると、「猪突猛進タイプ」と「やりっ放しタイプ」の2つのタイプがあります。
それぞれの特徴を簡単に紹介します。

猪突猛進タイプ

「猪突猛進タイプ」の特徴の場合は、目標を設定した後は計画通り進まなくても、ひたすら実行し続けます。根性で我武者羅に頑張り続ける、熱血営業マンをイメージすると分かりやすいかもしれません。目標に向かって一心不乱に向かうことは大切ですが、思うように進まなければ立ち止まって原因を考えたり、軌道修正したりすることが必要でしょう。

やりっ放しタイプ

「やりっ放しタイプ」の場合は、目標を達成しても達成しなくても終わった後は活動を振り返らないという、文字通りやりっ放しにします。結果に一喜一憂することはあっても、振り返って活動を評価したり反省したりすることがないので、経験や学びをその後の活動に生かすことができません。
大きな損失であり、もったいないことです。

③職場メンバーの巻き込み

3つ目は、職場メンバーの巻き込み(「点」ではなく「面」での成長支援)です。人を育てるのが上手な上司は、周囲の力をよく活用していると言われています。自分ひとりで、部下の成長支援を抱え込もうとせず、職場メンバーの力をうまく活用しましょう。

「成長支援」の内容には、業務に関する指導・アドバイス(業務支援)だけでなく、振り返りのサポート(内省支援)、励ます等の精神的ケア(精神支援)も含まれます。

職場メンバーのうち、次世代管理職の候補者は積極的に巻き込みましょう。彼ら/彼女らが、管理職になる際のよいトレーニングとなります。

次世代管理職時にクリアしておくべき成長課題

管理職のひとつ手前、次世代管理職時に、クリアしておくべき成長課題は、「管理職としての権限がない中で、いかに影響力を発揮して、人と組織を動かすか」です。「権限(ポジショナルパワー)を使わずに、影響力を発揮して人と組織を動かす」経験を積まずに管理職になり、権限を得た人はパワーの発揮の仕方を誤ることがあります。

権限(ポジショナルパワー)を使って部下を動かすのは悪いことではありませんが、部下からは「管理職らしい振る舞い」には映らず、「管理職ぶっている」ように見えてしまいます。これでは、「この上司を信頼してついていこう」という信頼は生まれません。

権限を使わずに人と組織を動かす経験を積み、その術を身に付けた人が管理職になったなら、部下を動かすことへの苦労や悩みは軽くて済むのです。次世代管理職にもそのことを伝え、巻き込んでいきましょう。

業務マネジメントと人材マネジメントでチーム全体の能力を底上げ

業務マネジメントと人材マネジメントでチーム全体の能力を底上げ

下記のコラムでも述べましたが、職場環境の変化や働く人間の多様化により、新しい時代のマネジメントが求められています。

チーム作りのための基盤は「心理的安全性」、そして心理的安全性の確保のためには、「傾聴と自己開示を基礎とした良質なコミュニケーション」が重要です。

管理職とは、マネジメントをする人、つまり他者を通じて成果をあげる人を指します。マネジメントの両輪である「業務マネジメント」(部下を活かす効果的なジョブ・アサインメント)と「人材マネジメント」(日々の業務を通じた部下の成長支援)により、チーム全体の能力を底上げし、更に成果をあげることが求められるのです。

「マネジメント力」は管理職に不可欠なスキル

「聞いてわかったつもり」でも、「実践する」のは非常に難しいという声を多く耳にします。また、今はインターネットで誰でも簡単に情報が入手できる時代ですので、上司が思っているよりも、上司の行動は部下から厳しい目で見られていることも多くあります。

部下に求めるからには、上司も従来のやり方に固執せず、新しい知識を習得し、実践していくことが不可欠です。職場環境の改善は日々の積み重ねですので、小さなこと・簡単なことからまずは実行することが変化への第一歩です。忙しいときこそ、マネジメントを後回しにしない意識を持ちましょう。

マネジメントを行うこと得られるメリットは沢山

「マネジメント」に取り組むのは、部下のためだけではありません。管理職がマネジメントを実践することにより、部下のやりがいやエンゲージメントが高まり、仕事の成果が上がり、部下自身が成長するという好循環が生まれます。そうした好循環を見ることで、自分なりの「マネジメント」への思いや自信が生まれます。

それは結果的に、管理職である自分自身の成長やワークライフバランスの実現にもつながり、仕事に向き合うことが楽しくなるでしょう。はじめから完璧を目指さずに、周囲にも相談しながら、できることから1つずつ始めていくことが重要です。

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