人事評価制度を活用して組織力と個人の能力を高める方法

人事評価制度を活用して組織力と個人の能力を高める方法

昨今、企業の人事評価制度が、個人の能力や仕事の成果に基づくものへと変わりつつあります。この変化の中で、企業が従業員に求める職業能力と、従業員が自ら持つ職業能力を、お互いに理解し合うための共通言語の整備が求められています。

この記事では、人事評価制度についての理解を深めたい人事担当者の方々へ向けて情報を提供します。この記事では人事評価制度を活用して組織力と個人の能力を高める方法を解説していきます。是非最後までお読みください。

時代の変化に対応した、人事評価制度について

時代の変化に対応した人事評価制度

多くの企業が、人事評価制度を自社流に調整しながら構築し、業績の向上、社風の醸成、および従業員の能力開発を推進しようと考えています。しかし、制度の構築はできても、運用上の課題を抱えるところが多く、弊社にもよくご相談いただきます。特に「時代の変化にどう対応するか」という点での悩みが目立ちます。そこで、時代の変化に対応した人事評価制度とはどのようなものなのか、具体的に見ていきましょう。

時代が求める人材を理解する

技術革新が進む一方、人材の質も変遷しています。近年、ゆとり世代やZ世代の教育方法について悩む企業が増えてきました。

世代生まれた年
ゆとり世代1987年~2004年生まれ
Z世代1995年~2010年生まれ

具体的に「ゆとり世代」と指されるのは、1985年から2004年の間に生まれた層で、2002年度から2009年度に実施された新学習指導要領に基づく教育を受けた世代です。この世代が2008年4月から企業に就職し始めた際、基礎学力の低下や指示待ちの増加といった問題点が社会で指摘されるようになりました。時代とともに求められる人材の特性は変わります。そのため、各時代に対応できる人事制度の構築も不可欠です。

しかし、時代ごとの変動に応じて何を変え、何を維持するかの判断は重要です。人事評価制度の基本的な方針が頻繁に変わると、評価時に混乱が生じるリスクがあります。大きなマニュアルの変更は避け、詳細な手順書やフォーマットの改定を時代に合わせて実施する方が望ましいです。要するに、人事評価制度の基本方針は一貫して保ちつつ、具体的な手法は時代に応じて調整するという考え方が重要です。

時代の変化に併せて評価内容を見直す

評価項目の見直しは、時代の変化の反映と共に、業績向上に向けて企業の戦略につながる評価内容かどうかのチェックも常に欠かせません。企業が従業員に期待することを明確にすることが必要です。

注意ポイント

民間企業では、従業員からの成果を期待するのは当然ですが、成果主義の行き過ぎは避けるべきです。成果だけでなく、人間的な評価とのバランスをとりつつ、企業戦略の実現に資する評価制度の構築が理想的です。

評価項目の洗い出しを徹底的に行うと、評価内容が細かくなり、項目も増えてしまう傾向があります。評価方法を詳細化して重要度に応じて係数を加えると、評価の精度は向上するかもしれませんが、運用が複雑化します。簡潔で明瞭な運用が求められるのは、過度に複雑な制度は評価を行う側のモチベーションを低下させるからです。要するに、企業が従業員に期待する成果や行動を、シンプルに示すことが最も重要です。

評価者や管理者への研修の重要性

評価者や管理者への研修の重要性

評価者と被評価者間、あるいは評価者同士の評価において差が生じることは少なくありません。一部の上司は寛大な評価をしやすく、逆に厳しい評価をする上司もいます。これを解消するためには、評価者や管理者への研修や意識付けが不可欠です。

定期的な勉強会の開催は、この問題の解消に役立ちます。特に、評価の基準の統一は多くの企業での共通課題となっています。全員が完全に納得するのは難しいですが、評価基準の公正性と理解を深めることは大切です。

具体的に、評価点を1から5までのスケールで定義すると、未定義の場合に比べて「ほとんどが3や4の評価になる」という傾向が軽減されます。明確な基準を設定することで、正確な評価が可能となり、組織や部署の課題の特定や解決に資することができます。

(例)評価基準点
評価点評価基準
5特に優れている期待し求められる水準を十分に満たし、職務上の成果・行動等も申し分ない。
4優れている期待し求められる水準をほぼ満たし、職務遂行に支障が生じることはない。
3標準標準
2要努力期待し求められる水準に達しておらず、職務を円滑に遂行するには今一歩の努力が必要。
1要改善期待し求められる水準には程遠く、職務を円滑に遂行するにはかなりの努力が必要。

人事評価制度の位置付けの重要性

例えば「人事評価シート」ではなく、「有言実行シート」という名称で、目標管理シートと定義すると捉え方も変わります。ここでイメージしていただきたい有限実行シートについて記載します。

有限実行シートは、半年ごとに個人が目標設定し、上期下期で、何をやるかを記入するシートです。上司との面談で、各人の能力に応じて目標のすり合わせを行い、半期ごとに評価します。

シートの使い方ですが、上段の記入欄は、今期新たにチャレンジすることを記入します。下段の記入欄は普通の目標で、合計5つまで記載できます。記載する項目数の決まりはありませんが、最低3-4つは設定します。いつまでに行うかを表記し、それを上司が承認します。行動評価の項目も、予め上司と擦り合わせを行います。

有言実行シートの使い方
  • 上段の記入欄
    今期新たにチャレンジすることを記入
  • 下段の記入欄
    普通の目標で合計5つまで記載

一般的な行動評価は「遅刻をしない」などの勤務態度やマナーに関連するものが中心ですが、「誰にも負けない努力をする」や「強い意志を持って行動する」、「お客様に思いやりの心で誠実に対応する」といった精神的な要素や価値観を重視することで、企業の理念や大切にしている考え方を従業員に伝え、正しい行動を促すことができます。

このように、評価のためのシートと位置付けるのではなく、目標達成するためのシート、有限実行するためのシートと位置付け、チャレンジ目標役職役割に求められる業務遂行内容に基づく目標の2種を設定することで、従業員の人事評価制度への意識を変えることにもつながります。

評価は将来の成長や意欲を刺激する制度

評価は将来の成長や意欲を刺激する制度

人事評価を実施する際、評価に疑問が生じた場合は、評価調整会議でその内容を議論し、必要な修正を行うことで評価のぶれを最小限に抑えることが可能です。しかし、評価には必ずといっていいほど個人の主観が介入し、結果として甘かったり辛かったりする場合があります。

評価は、個人の仕事への意識や意欲を高めるための手段であり、上司と部下の信頼関係に基づいたものでなければ、被評価者の不満が残ることが考えられます。評価が低かった場合、その原因や今後の改善策を明確に伝え、次回の評価に繋げる指導が求められます。

評価は学校の通信簿とは異なります。企業は従業員が長期間働く場所ですから、評価は単に現状の反映ではなく、将来の成長や意欲を刺激するための制度であるべきです。このため、上司が従業員の不足点を補完することも重要となります。また、評価を行う際には、企業理念を再確認し、その理念が評価基準や教育理念にどのように反映されているかを理解することが必要です。

評価は成長を促進する手段

評価は、従業員に企業理念や方針を再認識させる機会であり、各個人のキャリアの進展を上司と共に検討し、不足している部分を補完しつつ、企業と個人の双方の成長を促進する手段と考えるべきです。この視点を持ち続け、評価者や管理者が部下に伝えることが大切です。

 

人事評価制度の設計、運用支援はSトレにお任せください

人事評価制度の設計、運用支援はSトレにお任せください

Sトレでは人事評価制度の設計はもちろん、運用の支援も行っております。例えば、従業員の遂行している職務が異なる場合、抽象的な表現を評価基準に用いると、特殊な職務を遂行している従業員には、評価基準の適用が難しい場合もあります。人事評価制度は従業員に対して公平に適用することが大原則ですが、一部読み替えができるようにして、特殊な専門性の社員に対しても適用ができるような取り組みを調整することも重要です。

人事評価制度の改定に当たっては、どれほど手の込んだ人事評価制度をつくっても、2割程度の従業員は、その人事評価制度に対して意見を持ったり反対したりすると言われています。そこをあえて押し通したり、弾圧したりするのではなく、運用していく中でそのような社員からも意見を聞いて、改善を検討していくことが有効です。

上記を自社だけで行うことは、人事評価制度について学習している人事責任者や担当者がいらっしゃらない企業では難易度が高いでしょう。そこで、弊社が「外部組織人事パートナー」という立場で、人事評価制度の仕組みづくりや運用を支援しております。

人事評価制度についての理解は深まりましたでしょうか?人事評価制度を策定・運用することで、組織として団結しやすくなり、目標達成に近づくことができます。また、個の能力を高めていくことを求められる現代では、人事評価制度を活用して従業員自身が自己の能力を可視化することも有益でしょう。是非有効活用してみてください!

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