【OJTとティーチングが重要】コロナ後の環境変化に合わせた取り組み

新型コロナウイルス感染症をきっかけに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、産業構造や働き方などが急速に変化しています。デジタル化の加速に伴い、労働者も以前よりも迅速にリスキルアップする必要が求められています。デジタル化の進展と共に求められるスキルの変化が激しいため、企業や個人の間で対応力の差が拡大する懸念もあります。このような状況を踏まえ、今後は従業員の教育方法について見直す必要があると考えられます。

また、オンライン上で業務や教育訓練が可能であっても、新卒社員や中途入社者など新たに参入した社員に対しては、適切なOJT(仕事の実地教育)の実施が重要です。

本記事では、環境の変化と組織の変遷に焦点を当て、今後の企業における必要な取り組みについて記述します。

環境変化と組織の変遷

DX(デジタルトランスフォーメーション)

環境の変化と組織の変遷について触れる前に、まず組織の成立要件について記載します。
組織の成立要件は、以下の3つと言われています。

  1. 共通の目的・目標が共有されていること
  2. コミュニケーション(双方向の伝達と情報の共有化)が成立していること
  3. 協働する貢献意欲が具備されていること

一方で、DXやグローバル化の影響は、組織機能とそのパラダイム、枠組みに変化を起こしています。

パラダイムとは

時代や分野において支配的規範となる物の考え方やとらえ方を指します。

今までの組織は、「組織は個人の集合体である」とし、個人を1つのモジュール(機能)として捉え、そのパフォーマンスを組み合わせて組織全体を機能させる機械論的アプローチとなっていました。現在は、「人は本来多様な能力を持っており、どの能力をどれだけ発揮できるかは、人と人との関係や置かれた環境によって決まるもの」と考えられています。

組織におけるパラダイムの変化

組織におけるパラダイムの変化は、時代や社会の変化によって生じます。いくつかの組織パラダイムの変化の例を紹介します。

過去現在
主観主義/客観主義
・確立した自己が存在する
・答えは独立して厳然と存在している
社会構成主義
・自己は周りとの関わり合いで規定される
・答えは対話の中から生まれてくる
機械論パラダイム
・全体を要素に還元して分析
・設計してコントロールする
生命論(複雑系)パラダイム
・個と個の関係が全体をつくる
・包括的にとらえて創発を促す
規範論的戦略
・事前の計画が実行の成否を決める
・分析精度を上げて目標に近づく
進化論的戦略
・計画通り進まないのは当たり前
・実行段階の学習をフィードバックする

つまり、「組織は関係性が集まった有機体である」ととらえる複雑系(生命論)的な考え方が組織運営の根幹になりつつあります。

組織の役割・機能とその枠組みの変化

組織の役割・機能についても変化が生じています。組織の役割・機能とその枠組みの変化について、わかりやすくモデル例として示したものが以下です。

図:組織機能と枠組みの変化

組織機能と枠組みの変化

※参考文献「組織マネジメントのプロフェショナル」著者:高橋俊介 出版社:ダイヤモンド社より編集

野球型組織」は、その役割・機能が一人ひとりに固定されています。一方、「サッカー型組織」では、基本的な役割・機能は決まっていますが、ディフェンダーでも状況によって攻撃に参加し、逆にフォワードが守備の役割を果たすこともあり得ます。しかし、序列固定化の弊害として以下の傾向が指摘されます。

序列固定化の弊害
  • 実力に見合わない上位役職の固定化
  • 内向きで上向きの組織文化・風土による環境変化への対応の鈍化
  • 成果や実力よりも政治力が優位とされること

つまり、環境変化が進む中で、組織マネジメントでは「仕事や役割が変わることへの抵抗感を減らす」ことを意識した運用が重要です。

今後企業に必要な取り組みについて

OJTの実施

上記に記載した、「人は本来多様な能力を持っており、どの能力をどれだけ発揮できるかは、人と人との関係や置かれた環境によって決まるもの」、「環境変化が進む中で、組織マネジメントは仕事・役割が変わることへの抵抗感を減らすことを意識した運用が重要」という背景も踏まえ、今後企業に必要な取り組みについて、2点記載します。

OJTの実施

オンラインで対応できない部分を補完するために、組織マネジメントにおいてOJTの実施が重要な役割を果たします。

尚、OJT は人材育成の中心に位置づけられており、以下の特徴・メリットがある反面、そのリスク・課題に留意する必要があります。

OJTのメリット
  • 各人の状況に応じた個別の教育・訓練が可能
  • 各人の能力・個性に応じた指導により適性の発見、能力開発に有効
  • 業務に直接関連する実務的知識、技術・技能の向上が図れる
  • 業務の場で実施が可能で、特別な場所、時間費用を要しない
OJTのデメリット
  • 業務の遂行そのものに重点が置かれることから教育的配慮が薄れる
  • 対象者により機会の不均衡が起こる
  • 指導者の能力、経験等により教育効果に格差が生じる

冒頭に述べたように、DXやリスキリング、新入社員の戦力化において、正しいOJTを通じて会社の考え方を理解させることは非常に重要です。

単に業務を教えるだけであれば、人でなくても良い時代です。そのため、マネージャーは「OJTを通じて部下を育成する」という意識を持つ必要があります。

ティーチングの強化

ティーチングとは、知識や経験を基にして指示や助言を与えること、あるいは情報を持っている人が知らない人に情報を伝達することを指します。

また、ティーチングは、学び手の知識や経験が不足しており、「自己解決ができない」といった状態から、「少し自己解決ができる」というレベルの新入社員向けのトレーニングです。

■ティーチングパターン1:指示型

相手の状況自己解決ができない(依存)
留意点直接本人に個別に指示を与える。
具体的で明確に指示を伝える。
期限を設定する。
なぜそれを行うか、理由を伝える。
指示が正確に伝わったかその場で確認をする。
進捗状況の確認をし、必要ならば援助する。
完了したら、報告させる。

■ティーチングパターン2:助言型

相手の状況少し自己解決ができる(半依存)
留意点助言を必要とする時まで口出ししない。
「私は、・・・こうしたら良いと考えるよ」
「私は・・・と感じるよ」というスタイルで行う。
部下の選択肢を増やすだけで、選択は部下に任せる。
助言なので、「指示」を出さない。
助言に従わなくてもそれを受け入れる。助言は部下の行動を援助するために行う。

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社員の能力を会社の戦力として向上させるためには、OJTやティーチングが重要であることは理解できるでしょう。

しかし、実際に行う際には、どのように教えれば良いのか悩むマネージャーや理解してもらえないと感じるマネージャー、自分の時間が取られると感じるマネージャーも少なくありません。

また、優秀な営業担当者がOJTやティーチングを行う立場になった場合、成果が思ったほど上がらず苦悩するケースも多く見受けられます。

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