簡易でも人事評価制度導入で効果を発揮!実際の顧客事例を元に詳しく紹介

人事評価制度導入による変化

本記事では、人の育成を測る際に活用する「人事評価制度」について記載いたします。

そもそも評価とは何でしょうか?広辞苑で引くと「善悪・美醜・優劣などの価値を判じ定めること。特に、高く価値を定めること。」と出てきます。「善悪」「美醜」「優劣」など、漢字が意味している通り、いずれも何かと何かを比べて差分を測ることを意味します。

人の育成を測るときは「現状の姿」と「望ましい姿」の2つの情報を比較して測ります。

「人事評価制度」と聞くと、難しい印象を持たれる方が多いですが、根本は「現状の姿」と「望ましい姿」の2つの情報を比較し、「望ましい姿」になるために「具体的に何をしていく必要があるのか、何を求められているのか」を明確化した仕組みです。

人事評価制度を導入するきっかけになった顧客事例

人事評価制度を導入するきっかけになった顧客事例

弊社の顧客企業で人事評価制度を導入するきっかけになったときのエピソードをご紹介します。

人事評価制度を導入するまでの流れ

弊社顧客企業の事例を時系列で紹介します。新入社員が入社し、クレーム発生、人事評価に至るまで簡単に説明いたします。

飲食店を多店舗経営しているお客様の事例になります。初めて学卒の新入社員を雇用することになりました。ここでは、新入社員の方のお名前をAさんとします。

①Aさんが学校を卒業し、4月に本入社

Aさんは3月に学校を卒業し、4月に本入社したとき、業界用語も会社のことも何もわからない状況でした。その後、Aさんは仕事を通じて業界用語や会社のルールを学び、VIPのお客様の接客も任されるようになりました。

②半年後VIPのお客様からクレーム

半年後、Aさんの接客応対について、VIPのお客様からクレームが入り、その内容が本部に通知されました。

③店長にAさんの評価をヒアリング

本部のマネージャーは、Aさんが勤務する店舗の店長に、Aさんの就業状況をヒアリングすることにしました。

当時この企業には人事評価制度が無かったため、マネージャーがAさんが勤務する店舗の店長へ、Aさんについてヒアリングすると「Aさんは頑張っていますよ」という返答でした。

④このままでは良くないと思い、人事評価制度を導入

一番近しい責任者である店長がAさんの就業状況について正確に把握出来ておらず、曖昧な回答しかできないことを知り、経営者は不安になりました。

このままでは良くない、ルールを作らなければいけないと考え、人事評価制度を導入することを決定しました。

もし最初から人事評価制度が定義されていたら?

もし予め、この企業が社員に求める「望ましい社員の成長」が入社後のスケジュール毎に細かく定義されていたらどうでしょうか。

例えば、以下のような内容です。

  • 学卒新入社員は、入社後1か月以内に、会社および店舗のルールを全て覚える
  • 学卒新入社員は、入社後2か月以内に、職場で使用する業界用語を全て覚える
  • 学卒新入社員は、入社後3か月以内に、自店舗のSNS会員を毎月300名獲得する
  • 学卒新入社員は、入社後4か月以内に、来店されるお客様に、自然な流れで追加ドリンクのご案内をできるようになる
  • 学卒新入社員は、入社後6か月以内に、VIPのお客様の顔と名前を30組以上覚えて、VIPのお客様に2品以上追加オーダーをいただけるような接客をする

上記をふまえて考えると、 Aさんは基本的な接客は行えていたかもしれません。当然ながら、本人も希望を持ち、入社したため、本人なりに頑張っていたことでしょう。
しかしながら、企業(自社)が求める基準、お客様が店舗に期待している基準を満たしていなかったのです。

その後、この企業では、社員に求める「望ましい社員の成長や行動」を定義し、社員は毎月現状と会社の望む姿を比較し、自身に足りない知識や技術をどのように習得していくか、本人と店長で面談を実施しています。そして、評価を制度に落とし込み、指針書として全社員に配布し、評価制度として運用を開始しました。

簡易な評価制度ですが、「何のために評価を実施するのか。その結果、どうなるのか」ということを、評価される側も評価する側も理解しましたので、以前より的を得た会話もできるようになりました。

結論

社員の評価を行うのであれば、社員に求める姿や望ましい行動を整理し、定義付け、ルール化した評価の指針書を作成することが重要です。

それぞれの立場で見る人事評価制度

それぞれの立場で見る人事評価制度

経営者と社員は立場が異なりますが、人事評価制度はどういった効果があるのでしょうか。経営者と社員、それぞれの立場から人事評価制度について見ていきましょう。

経営者視点での人事評価制度

経営者の立場で考えると、社員に「もっとこうして欲しい」ということを日々感じているのではないでしょうか。同時に、その都度、あるいは会議等でそのことを伝えてもいまいち伝わらない、行動が変わらないと感じているのではないでしょうか。なぜなら、口頭で伝えても十分に伝わらないことは多々あります。そのような時に役立つのが人事評価制度なのです。

人事評価制度は「こういう行動をとって欲しい」という、経営陣、会社のメッセージそのものです。そのため、制度として明確に理想の行動を提示し、かつ定期的に実践できているかを確認することで、社員に望ましい行動を促せます。

このように考えると少数の社員数の時期から、簡易でも人事評価制度は必要と言えるでしょう。

社員視点での人事評価制度

多くの社員、特に経験が浅い新入社員は、仕事において何をすれば良いかを理解できていません。そのため、社員にとっても、人事評価制度は、自社が社員に求める行動が明示されているため、実は非常に助かる制度なのです。もちろん、理想は自ら考え行動してくれることですが、そうは言っても全員がすぐにそうなれるかというと難しいでしょう。

長期目線で理想の状態を目指しつつも、短期目線で具体的な行動を提示する必要があります。社員視点で考えても、簡易でも人事評価制度は必要と言えるでしょう。

評価者の悩みや不安

評価者の悩みや不安

「人事評価制度を導入しましょう」と評価者(管理職等)にお伝えすると、反対をされる場合があります。それは、評価者が、被評価者を評価することに不安があるからです。弊社でも評価者の方と個別面談をさせていただくことがありますが、その際に以下のような話を聞きます。

評価者の不安
  • 「人事評価のことを1から10まできちんと勉強していない私に部下の評価ができるのですか?」
  • 「客観的に評価できるのか?主観が入ってしまいそうです」
  • 「部下を評価をすることで、人間関係が崩れてしまいませんか?職場の雰囲気が悪くならないですか?」
  • 「部下(評価される側)に、仕事への意欲を低下させないように話ができるか自信がありません」
  • 「目標設定のとき、その人にあった適切な助言ができるが分かりません」

「人が人を完璧に評価する」というのは非常に難しいことです。そのため、評価制度を導入することのメリットではなく、評価制度を導入しないことのデメリットを考えましょう。前述した通り、評価制度は運用を始めることで、評価される側も評価する側も変化・成長することができるきっかけになります。

また、評価制度は常に改善していきます。そのため、1年後や2年後には大幅に内容が変更されているかもしれませんが、それでも問題ありません。その理由は、改善を重ねて、自社に適した評価制度が運用できることが望ましいのです。

人事評価制度の導入で変化すること

人事評価制度の導入で変化すること

人事評価制度を導入することで、以下のような変化につながります。

❶人材育成

コンピテンシーに基づき明確な目標を設定することで、社員のやる気が出て日々の行動が変わります。

❷優秀な人材確保

適正な評価を行うことで、頑張りを認めてくれる会社だという認識が生まれます。優秀な人材確保につながります。

❸採用コスト削減

人事評価制度の適正な運用によって、離職率が下がります。離職率が下がることで採用コスト削減につながります。

❹労働生産性向上

細かく設定し、例えば、3か月経過ごとに評価目標の見直しをすることで、行動改善を行えます。行動が改善されると生産性の向上につながります。

❺離職率低下

個人の達成度を正当に評価し、給与と連動することで社員がやりがいを感じます。やりがいが生まれることで離職しにくくなります。

❻社外へのアピール

しっかりとした人事評価制度を導入し運用していることで、求職者などへのPRにつなげます。

人事評価は将来の伸びしろを見ることが重要

終身雇用、年功序列の組織文化に培われた日本の人事は、人材を大事にする傍ら、個人の成長というより、揺るぎない組織を築くことに重きが置かれてきました。高度成長時代にはそれが必要かつ有効でした。
強い組織を作るために、大勢の社員を等しく扱い、規律を乱さない、上意下達がうまくまわるような組織を作ってきました。

しかし、日本でも少しずつですが、組織から個人のパフォーマンスや成長に重きを置いた評価を取り入れる企業が出てきています。人事評価では、業績だけを見るのではなく、その社員の将来の伸びしろも見ることが重要です。

今はまだ足りないがどう育成したら今後成長できるのか、ビジネスでさらに貢献できるようになるのかを評価者される側も評価する側も考えるのです。人事評価制度の導入により、評価者は、被評価者本人の将来的な個人主体の課題や可能性を観察することができます。するとその個人への適切な指導や教育が自ずと見えてきて、上司は指導を通じて育成への道筋を立てることができます。

将来を見据えた個人主体の課題は、関係者にとって自律的な学習につながり、社員は取り組むことができます。その結果として、個人の成長を促すための評価になるのです。

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