中小企業では人材の獲得競争が激化しており、特に新卒社員など若年層の採用環境が厳しさを増しています。5年前、10年前と比較すると、求職者も情報を入手しやすい時代に変化しています。そのため、今後は多様なキャリアパスの整備やワークライフバランスの実現、組織内コミュニケーションの向上などを進め、社員が長期的に働き続けたいと思えるような環境を整備することを企業は求められます。そして仕事のやり方を常に見直し、生産性向上と働き方改革を推進していく必要があります。
多くの企業にとって、人材は経営資産であり、競争力の源泉です。入職後のキャリアパスを明確にし、従業員が仕事を通じて成長を実感できる仕組みを整えることが、人材の確保・育成・定着に必須の条件です。人材育成の仕組みを整えて、企業と従業員の成長をともに実現していくための仕組みの1つに、人事評価制度があります。
今回は人事評価制度を活用し、「人が育つ会社」の実現に向けた取り組みについて記載します。
- これから人事評価制度の導入を検討されている企業の方
- 今までは社長が全社員の評価をしていたが、社員数の増加により社長一人では見切れなくなってきた企業の方
INDEX
厚生労働省の方針
厚生労働省では、人事評価、人材育成、採用、さらに検定試験の「基準書」として、様々な場面で活用可能な仕組みとして「職業能力評価基準」を発表しています。
企業内でこの職業能力評価基準を基準として活用することは勿論のこと、自社に合うよう独自に調整して活用することも推奨されています。
今日の経営環境は従来にも増して不確実性が増しており、その中で目標達成や課題解決に向けて、適切な人材を育成・確保することが最重要の経営課題となっています。そのため、各企業は自社の求める人材の職務内容を明確化し、それに適合する人材を確保・育成する必要があります。
つまり、「職業能力評価基準」は、企業の人材(従業員)の有する職業能力と適切に一致させるための「共通言語」となる仕組みなのです。この職業能力評価基準は人事評価に活用することができます。
職業能力評価基準について
職業能力評価基準を活用することで、 仕事を遂行するために必要な「知識」と「技術・技能」に加えて、「成果につながる職務行動(職務遂行能力)」を明文化できるため、従業員も目標に向かって業務に集中しやすくなります。
職業能力評価基準を人事評価制度として適切に運用するためのポイントは、それぞれの職能の基準(職能要件、職能等級定義)をいかに具体的な物差しとして整備・運用できるかという点にあります。
下図は、事務系職種(営業)の職業能力評価基準を活用した人事評価表の一例です。
〈職業能力評価基準を活用した人事評価表の一例〉【対象職種】営業
等級 | 職能定義 | 管理職 | 専門職 |
---|---|---|---|
8 | 統括管理・高度専門職能 | 〔営業戦略〕 ・経営戦略や様々な制約条件を総合的に勘案しながら、営業活動の全体的方針を策定し、その達成に向けた道筋を示している。 ・短期的な売上拡大だけを目指すのではなく、中長期を見据えて新規開拓や既存客深耕のための仕掛け作りを行っている。 〔営業マネジメントの推進〕 ・営業部門の業務全体の総合的な進捗管理を行いながら、部下への指示・動機付けを的確に実施している。 ・重要顧客とのトラブルなど、大きなトラブルの際には他部門と連携し自ら先頭に立って速やかに問題解決している。 〔評価と検証〕 ・戦略の実行にどの程度貢献したかという観点から、営業部門の成果を適正に評価・検証している。 ・現行の営業活動のあり方を総点検し、環境や時代に合わせて営業方法や営業スタイルを変革している。 〔人と組織のマネジメント〕 ・組織全体の中長期的なビジョンを示し、部下のやる気やチャレンジ精神に効果的に働きかけている。 ・自分を超える次世代リーダーを計画的に育成している | 〔顧客・取引先との折衝と関係構築〕 ・部門を代表して経営上の重要事項や収益を左右する重要事項に関する折衝を行い、交渉をまとめている。 ・短期的利益のみを追及するのではなく、中長期的な損益を考慮に入れながら交渉・折衝を行っている。 〔営業技術の発揮〕 ・豊富な市場情報や顧客ネットワークをベースに顧客関係深耕の観点から、従来のパラダイムを転換し、自社を競争優位に導くような営業手法を開発している。 〔問題解決を通じた顧客満足の実現〕 ・お客様とのトラブルが発生した場合やレア・ケースでの判断について、誠実かつ迅速に対応し、問題を解決している。 ・高い顧客満足を実現するため、お客様に対する肯定的な姿勢・態度や期待に添えない場合の代替案など、常に顧客視点での対応を徹底している。 〔後進の指導・育成〕 ・自ら継続学習を行い製品知識や関連スキルを深め、後進の模範となって組織メンバーの学習・成長意欲を喚起している。 ・営業に関する豊富な専門知識と実務経験を有し、社内では営業部員への指導的役割を果たしている。 |
7 | 上級管理・専門職能 | (略) | (略) |
6 | 管理・専門職能 | 〔組織目標の設定〕 ・現状追認ではなく、常に「本来どうあるべきか」という問題意識から挑戦的な組織目標を設定している。 〔進捗管理〕 ・定期的にミーティングを行うなど、仕事の進捗状況を常時把握し、深刻な問題が発生する前に予防措置を講じている。 ・部下の職務遂行に助言を行うとともに、重要な場面では自ら出向いて直接問題解決に当たるなど、部下の目標達成をサポートしている。 〔営業活動の検証〕 ・担当組織の定性的・定量的成果を期首の目標に照らして適正に評価している。 ・目標未達成の場合には安易な責任転嫁を行うことなく原因を分析し、次期の改善策を取りまとめている。 〔部下の指導・育成〕 ・部下の能力や専門性、経験、性格等を勘案し、適切な目標設定が行われるよう指導している。 ・部下の仕事ぶりを把握し、過労防止や安全衛生の観点から時宜を得た助言・指導を行っている。 | 〔顧客・取引先との折衝と関係構築〕 ・条件が厳しい交渉でも安易に妥協することなく粘り強く交渉し、双方が一定の満足のいく「win-win型」の結果を導いている。 ・顧客・取引先のキーパーソンと本音で交渉できる信頼関係を構築している。 〔営業技術の発揮〕 ・顧客に対して競合製品と比較した際の優位性や特長を効果的に説明し、自社製品のブランドイメージを高めている。 ・顧客の発する何気ない言葉や態度の中から背後に隠されたニーズやメッセージを読み取り、顧客ニーズに関する仮説を設定し、更なる関連情報の収集によってその仮説を検証している。 〔問題解決〕 ・販売後のアフターサービスやフォローアップによって課題を解決するとともに、新たなニーズやシーズを発見し、インキュベーションに繋げている。 ・競合・市場環境に照らして自社の営業政策が適当かどうかを検証・評価し、問題がある場合は解決策を提案している。 〔顧客満足の推進〕 ・日頃から他業界・他業種を含めて顧客サービスの好事例を研究し、自組織に取り入れられるものを絞り込んでいる。 |
5 | 指導監督職能 | (略) | (略) |
職業能力評価基準の活用事例
実際に職業能力評価基準を活用して、人事評価制度を設計・運用した事例をご紹介します。
従業員の職務能力向上を推進した事例
- 従業員一人ひとりが自分の職務をより明確にできる、人事評価制度が求められていた。
- 経営戦略の課題であった「人材育成と技術の向上」を実現するための仕組みを構築して、運用することを求められていた。
- 従来の人事評価制度に対して、より具体的な行動指針である職業能力評価基準の「職務遂行のための基準」を加えたことで、従業員一人ひとりの業務の見える化に繋がった。
- 従業員一人ひとりが自分の業務を詳細に把握することができ、自ら評価項目を提示することで評価する側との評価のギャップをできるだけなくすことに成功した。
- 従来は、会社から求められている能力が分からず、目標を立てづらかったが、新しい人事評価制度では求められる人材像が明確になった。そのため、キャリアパスも明確になり、仕事へのやる気にも繋がった。
- 産休に入る上で業務の引き継ぎを心配していたが、職務の内容や実際の仕事の流れが明確になったので引き継ぎも楽だった。また、職場復帰後に、子どもが熱を出して会社を休まなければならないことがあったが、誰が代わりに対応できるのかがすぐに分かり、仕事に穴が空くこともなかった。
従業員一人ひとりを適正に評価するために導入した事例
- 直近5年で従業員数が大幅に増加し、従来は社長が従業員の評価を行っていたが、従業員一人ひとりの業務に社長の目が届かなくなってきたため。
- 従来は、従業員の評価基準がなく、従業員は自分が会社からどのように評価されているのか解らなかったため。
- 従来の人事評価は、「1:指示通りできる」「2:指示なしでもできる」「3:それを工夫してできる」の3段階で抽象的かつ表面的なものだったが、「人事評価基準」➡「ランク別点数」➡「賃金テーブル」の3段階で評価される分かりやすい制度になった。
- 自分のレベルを確認することで、キャリアアップに繋がったり、仕事へのモチベーションが高まった。
- 評価を見て落ち込んだが、それでも、自分が上司と会社にどう評価されているのかを知ることは大切だと思った。
職業能力評価基準を基にリーダーとなる従業員を育成した事例
- 競合他社の激化、業務内容の高度化に伴い、求められる能力が多様化し、それに対応する人材育成のための指針が必要となったため。
- 経営幹部が行ってきた人事評価を、一般管理職でも行えるようにするため。
- 人事評価制度を策定する過程で、管理職社員が会社の理念や能力開発、従業員の評価などさまざまな議論を重ねたことで、共通の認識が生まれ、お互いの理解を深め合えた。
- 人事評価制度を活用することで、中間管理職が部下への指導力や説明能力を高めるためにも役立っている。
- 管理職社員が切磋琢磨する中で一体感も生まれ、会社の雰囲気や業務にも良い影響が出た。
- 管理職を目指す上で、これからの時代に必要とされるマネジメントのできるリーダー像が明確になった。また従来は指導力やマネジメント能力を適切に評価する術もなかったため、その基準ができたことが良かった。自身の課題がはっきり見えることで、前向きに取り組めるようになった。
管理職とスタッフ職の仕事に対する共通認識を啓発した事例
- パート・アルバイトの評価基準はあったが、正社員の評価基準がなく、客観的な人事評価制度の確立が求められていたため。
- 従来の給与体系を見直す必要があったため。
- 新しい人事評価制度の試験運用を始めると、評価シートのほとんどの項目で○がつけられており、人の評価の仕方が分かっていないことが分かった。そこで、評価者全員と面談し、人を評価することの根本から話し合った。
- 明確で具体的な目標を掲げ、個々の強化ポイントの意識づけを行ったことで、効果を挙げた。
- 今まで職務の概念になかった職能要件を認識することで、仕事に対する視野が広がり、自部署を超えて会社全体を意識した行動を考えるきっかけとなった。
- 上司が思っていることと、自分が感じていることをぶつけ合う場は今までなかったし、こういう客観的な物差しがないと腰を据えた話し合いも難しかったため、実際に上司と一緒に話し合うことで新たな気づきも生まれている。
パート・アルバイトの人事評価制度を再構築した事例
- パート・アルバイトの人事評価制度の精度を高めるために、職業能力評価基準を活用した。
- キャリアパス制度の一環として、パート・アルバイトの正社員への雇用転換への架け橋としての人事評価制度のあり方を考えていたため。
- パート・アルバイトが従業員全体の8割を超える中で、離職率の高いパート・アルバイトの方ができるだけ長く働け、また正社員への雇用転換がイメージできる、公正かつ使いやすい人事評価制度ができた。
- 従来は、きちんとした人事評価制度はなく、業務時間数や面接だけで上司が部下の評価を決めていたが、人事評価制度の導入で、パート・アルバイトの公正な職務評価ができるようになった。
- 職業能力評価基準は客観的な評価を数値化できるので役立った。
- 自己評価と上司評価とのギャップを示しながら面談することで、スキルアップの進捗状況や研修の必要性など、今後の自己研鑽にも活かせると感じた。
- スーパーバイザーに到達したパート・アルバイトは、正社員への登用の道も開かれているため、モチベーションを高めることができる。
職業能力評価シートの活用について
職業能力評価シートとは、「職業能力評価基準」において職種・職務・レベル別に定められた「職務遂行のための基準」を簡略化したものであり、人材育成に有効な示唆を得られるチェック形式の評価シートです。このシートを利用することで、「自分(または部下)の能力レベルはどの程度なのか」や「次のレベルに上がるには何が不足しているのか」を具体的に把握することが可能となります。
職業能力評価シートの活用により、キャリアの道筋に沿って従業員の成長を支援できるだけでなく、従業員一人ひとりの強みと弱みが明確になります。この結果を集計すれば、組織全体の育成課題を洗い出すことができ、さらに能力チェックの結果を部署別に集計することで、組織ごとのスキルの偏在状況が「見える化」されます。この可視化によって、配置の適正化など人材活用の最適化を実現することが可能です。
評価者の「目線合わせ」の重要性
職業能力評価シートは、「職務遂行のための基準」に照らして、「〇:1人で完結できる」「△:助言・支援があればできる」「×:1人では完結できない」の3段階で評価するというシンプルな仕組みです。
- 「〇:1人で完結できる」
- 「△:助言・支援があればできる」
- 「×:1人では完結できない」
それでも 実際に評価を行ってみると、〇△×のそれぞれのレベルのとらえ方について、 個人差が生じやすいことが分かります。そこで、 評価者の「目線合わせ」を徹底することが不可欠となります。
そのための方法として、 評価を行う前に評価者(管理職等)に対する説明会や研修会を実施し、評価基準や評価ルール等について、 あらかじめ認識を擦り合わせておくと効果的です。さらに、 評価を行った後も、 評価者の目線合わせ会議(評価調整会議)を開催し、 評価者による差が発生していないか確認し、 評価調整を行うことを推奨します。
このような会議を繰り返し実施することで、「このような場合にはこういう評価になる」という自社内の共通軸が醸成され、 次第に 評価者の目線が揃うようになります。
- 目線合わせする能力細目の特定
本人と上司の評価にばらつきが大きい細目、評価者自身が評価しにくいと感じた細目など。 - 各評価基準の解釈を確認
➀で特定した細目について、〇△×それぞれのレベル感を具体的な行動を明らかにしながら全員で確認する。 - 評価目線のすり合わせ
➁の内容について、 参加者間で認識に食い違いがあれば、 その内容について話し合い、擦り合わせる。
その上で、 〇△×それぞれの基準を具体的な行動と結び付けながら設定する。
フィードバック(面談)の重要性
職業能力評価シートを活用して、 本人と上司がそれぞれチェックしてみると、両者の間に認識の違いが生じる場合があります。 このような認識の違いを本人へ伝えること、つまりフィードバック(面談)を通じて、 本人に気付きを与え、成長へ向けた行動改善や自己啓発を促すきっかけにすることができます。
以下にフィードバック(面談)のプロセスとポイントをまとめます。
フィードバック(面談)の手順
フィードバック(面談)は、以下の手順で進行します。フィードバックは納得感が重要です。しっかりと準備してフィードバックに臨みましょう。
概要 | 内容 |
---|---|
⓪面談の準備 | 予め部下に伝えたいことを明確にしておく。 |
①導入部分 | 面談の趣旨を本人に伝え、話しやすい雰囲気をつくる。 |
②フィードバック | 職業能力評価シートの内容をもとに、上司としての所感や伝えるべき結果について、本人へ伝える。 |
③時期の目標設定 | 今後、能力開発で取り組む課題と目標を確認する。 本人が実施することと上司が支援することを確認する。 |
④面談の終了 | 話し合った内容を再度最初から確認する。 本人の意欲を喚起させ、行動に向けて励ます。 |
⑤面談の準備 | 予め部下に伝えたいことを明確にしておく。 |
フィードバック(面談)のポイント
フィードバックの際にはどんな準備が必要なのでしょうか。フィードバック前とフィードバック中における準備についてまとめましたので、下記をご覧ください。
フィードバック(面談)に臨む前
フィードバック(面談)に臨む前に、以下の点を準備することが重要です。
- 本人の優れている点、 課題点を確認する。
「〇:1人で完結できる」とした項目、「×:1人では完結できない」とした項目を確認し、能カ ・ スキルの習得状況のおおよその傾向を把握する。 - 本人の評価と上司の評価に違いがある項目を予め確認、 整理しておく。
評価に違いがある場合、面談で認識をすり合わせる必要がある。 特に本人が「〇(一人でできている)」とし、上司が、「×:1人では完結できない」と判定した項目は、重要な育成ポイントになる。
フィードバック(面談)中
フィードバック(面談)の中では、以下の点を意識することが重要です。
- 優れている項目について、 本人の「強み」として伝える。
「〇:1人で完結できる」と評価した項目について、本人がとっていた行動を引用しながら説明する。
良い点は先に伝えるようにすることで、本人もその後の話がし易くなる。 - 評価の食い違いが生じている項目(特に、自己評価が上司評価より高い項目)を説明する。
「なぜそのような食い違いが生じたのか」について本人の話を聴きながら、評価を付ける前提とした事実や評価基準に対する認識に違いがないかを確認する。
本人の見方に修正すべき点があれば、上司の見方を伝える。
その際、 抽象的な説明ではなく、数値や具体的な行動事実を引用しながら丁寧に説明する。 - 本人に目標を設定させる。
目標や目標を達成するための活動計画は、本人に立てさせるようにする。
上司から押し付けられるのではなく、自らの意思で取り組むということを自覚してもらうことで、本人のやる気を引き出す。 - 本人の取り組みを支援することを約束し、励ます。
最後まで本人が目標に取り組むためには、適宜上司の助言が必要であるため、困ったときには支援することを約束し、一緒に取り組んでいくことを伝える。
OJTの重要性
OJTとは「On the Job Training」の略で「職場の上司や先輩が部下や後輩に対し、具体的な仕事を通じて、仕事に必要な知識・技能・姿勢・態度などを指導教育すること」を意味します。
どれだけ素晴らしい人事評価制度を策定しても、座学研修で人事評価制度について学習しても、職場で実践し必要な技術や能力を習得できなければ意味がありません。
人事評価を活用した人材育成のポイントはまさに、このOJTにあると言うこともできます。
OJTで教える側と教わる側のすべきこと
以下に教える側と教わる側が行うべき3つの事項を記載します。土台となるのは相互理解と信頼関係です。
教える側(上司) | 教わる側(部下) |
---|---|
①全体像と手順を「説明」する ・目的・理由や背景を伝える ・具体的な手順と期限を伝える ・説明した内容を確認する | ①頭で理解する ・分からないところは聞く ・きちんとメモを取る ・具体的な手順や期限を確認する |
②「任せる」「説明する」を繰り返す ・説明だけでは伝わらないことを理解する ・実際に行い、また説明することをくり返す ・実践できるようになるまで責任を持ちフォローする | ②実践してみる ・試行錯誤を繰り返す ・なぜできたのか(できなかったのか)考える ・不明な点は確認する |
③「気づかせ」「後押し」する ・自分でどのように進めるか考えさせ実行させる ・結果を一緒に検証する | ③試行錯誤する ・自分で考え主体的に実施する ・改善する、応用する |
OJTは組織の人材育成の根幹
人は「聞く」「見る」「体験する」ことで学ぶことができ、その中でも「体験する」ことが最も効果があると言われています。そのため、実際の体験を通じて学ぶOJTは非常に重要性が高まってきています。OJT実施にあたっては説明するだけでなく「体験」をさせながら教えていくことを心がけていきましょう。
OJTを効果的に行うことで、職場の中で仕事を通じて従業員を育んでいきます。そして様々な部署での経験の積み重ねを通じ、会社の次世代を担う従業員への成長を目指します。
- どのような業務や状況でも力を発揮するための「能力及び姿勢・態度の強化」
- 職場で必要な業務知識を主体的・積極的に習得し成長していく「自律性」
- 課題や変化に対し積極的に挑戦する「チャレンジ精神」
またOJTは教える側や組織にとっても様々な利点をもたらします。教えることで、他者への影響力の強化や業務の本質の理解につながり、また職場全体が教える側、教わる側となり相互に高め合っていくことで、職場全体のコミュニケーションの強化、業務遂行力の強化、職場での働きがいの醸成に繋がるのです。つまり、OJTは組織の人材育成の根幹ということです。
教える側と教わる側の信頼関係づくりのポイント
OJTの実施において、教える側と教わる側の信頼関係は非常に重要な役割を果たします。社会人ともなると、これまでの経験から異なる価値観、判断基準が成熟してきており、ただ単に業務の正しい知識を一方的に伝えていくだけでは、納得できないことや受け入れられないこともあります。
OJTの実施においては、教える側と教わる側がそれぞれ相手を尊重し、お互いに納得して進めていくことが重要です。以下に教える側と教わる側と管理者の心構えを記載します。
立場 | 心構え | 具体例など |
---|---|---|
教える側 | 相手に関心を持つ 相手の立場に立つ | ・期待を持って接する ・こまめに声かけをする ・感情的にならない ・分かりやすい言葉をつかう ・良い所を見る(悪い面ばかり見ない) |
教わる側 | 感謝と謙虚な姿勢で学ぶ | ・教えてもらって当たり前と思わない ・相手の話をメモする ・分からないことは聞く ・小まめに報告・連絡・ 相談する ・何でも挑戦してみる |
管理者 | 責任を持つ 職場全体での人材育成の推進 | ・OJTに責任を持って取り組む ・教える側、教えられる側の双方を支援する ・職場全体での人材育成を推進する |
朝の挨拶や休憩時間が重なった際の会話や笑顔など、ほんの些細な事ですが部下・後輩は強いメッセージとして日々影響を受けています。相手が安心する声掛けや態度の蓄積が信頼関係の構築に繋がっていきます。教える側や教わる側だけでなく、職場全体で相互にコミュニケーションを取り合い、信頼関係づくりを心がけることが重要です。
人事評価制度を活用した人材育成まとめ
今回は人事評価制度を活用し、「人が育つ会社」の実現に向けた取り組みについて記載しました。厚生労働省では、「職業能力評価制度」の中心をなす、公的な職業能力の基準として「職業能力評価基準」を整備していることを述べました。人材育成は、汎用的な知識やスキルを網羅させた上で、自社の業務内容に応じた実践的な内容を取り入れ、自社が大切にしている考え方や理念と併せて教え続けていくことが重要です。
「企業は人なり」と言われるように、従業員のスキルは企業の最大の資産であり、成長の源泉でもあります。従業員のスキルをより一層強化していきたいとお考えの方、自社の人材育成施策や人事評価制度を見直したいとお考えの方は、是非Sトレーニングにご相談ください。