1on1ミーティングを実施すると、部下1人1人の成長が促され、結果的にチーム全体の生産性が向上します。1on1ミーティングは実施して直ぐに結果が出るというものではありませんが、試行錯誤しながら継続していくことで、徐々に効果が表れるものです。
今回はこれから1on1ミーティングを実施する上司の皆様、管理職の皆様向けに、1on1ミーティングを実施する前に知っておいていただきたい知識とスキルをまとめます。
INDEX
1on1ミーティングと面談って何が違うの!?
「1on1ミーティング」という言葉は聞いたことがあっても、実際「今、社内で実施している面談とは何がちがうんだろう?」と思っている方も多いでしょう。
まずは1on1ミーティングと面談の違いを、簡潔に述べます。
面談
面談は、対話をするより「伝えること」が主に行われます。
面談には以下のような種類があります。
皆さんの会社でも実施している面談があるのではないでしょうか!?
- 評価面談
- 目標設定面談
- 進捗管理面談
- フィードバック面談
- 問題解決面談
基本的に半年に一度、または四か月に一度の頻度で、その期間の結果を話し合う時間です。
1on1ミーティング
1on1ミーティングは、メンバーの「業務遂行における効率を上げること」を主に行われます。
1on1ミーティングでは以下のようなことを上司と対話します。
- 日々の悩みや課題の解決
- 業務の振り返り
- 業務の進め方
- キャリア形成
- 信頼関係の構築
週に一度、少なくとも月に一度の短いサイクルで定期的に実施し、短期間での個人の行動目標を設定し、日々の細かい進捗や変化などをフィードバックする時間です。
- 面談
上司から部下に伝える場 - 1on1ミーティング
上司が部下の話を傾聴して部下の成長を促す場
1on1ミーティングで上司は何を意識すればいいの?
1on1ミーティングの重要性は分かったので、「いざ1on1ミーティングを実施してみよう!」と思い立ち、実施したものの「上手くいかなかった」「普段の面談と変わりがなかった」「何を話せばいいのか分からなかった」という声も多く上がります。
ここでは、1on1ミーティングの実施にあたり、「上司が意識すべきこと」を4つお伝えします。
- 部下と信頼関係を築こう
- 部下の話を傾聴しよう
- 部下を承認しよう
- 部下の内省を促そう
それぞれ見ていきましょう。
部下と信頼関係を築こう
部下が上司に対して心を閉ざしている状態では、1on1ミーティングは成立しません。まずは部下との関係づくりを行いましょう。
具体的には、まずは、業界の話でも社内の情報でもいいので、情報交換をし合って認識を擦り合せていきます。そしてお互いの共通認識が増えていくと、自然と相談をしやすい関係が築けます。
部下の心身の健康を確認しよう
部下の心身が疲弊している状態では、上司の言葉は部下に届きません!本題に入る前に、部下の心身の健康状態はしっかりと確認しましょう。まずは睡眠について確認してみましょう。
「最近眠れてる?」と話しかけます。「最近どう?」では「まあまあです」「普通です」といった内容が返ってくるかもしれませんが「最近眠れてる?」と話しかけることで、「実は最近寝付きが悪くて…」や「朝起きるのが辛いです…」というような内容が返ってくることがあります。
健康の話題、具体的には食事、睡眠、運動について、上司はある程度の知識を持っておくとよいでしょう。
また、上司自身の体験談や部下と同じ課題を持っていた時それをどのように乗り越えたのかなどを、分かりやすくエピソードとして話せると、部下は上司の話に聞く耳を持ち始めるでしょう。
部下の話を傾聴しよう
「傾聴」には2種類あります。
1つ目は「パッシブ・リスニング(受動的傾聴)」、2つ目は、「アクティブ・リスニング(積極的傾聴)」です。
2つの傾聴の違いを以下に記載します!
パッシブ・リスニング(受動的傾聴)
基本的に相手の話を黙って聴くことを指します。
「頷く」「相づちを打つ」など、普段私たちが無意識に行っているようなことだけして、聴くことを指します。
「聴く」ということを一度意識すると、普段自分がどれほど相手の話を聴けているのか、思ったより聴けていないことに驚くかもしれません!
上司が部下の話を遮らないで、部下が満足するまで部下に話をさせてあげるというのは、実はかなり根気のいることです。忍耐と愛情と時間が必要です。
普段なら遮って言ってしまうこと、言いたいことを我慢して、「そうなんだ」「うん、うん」などとだけ言いながら、話の先を促すと、上司の中で勝手に決めつけていた部下の考えや悩みとは違う、もっと深い悩みや、問題が見つかることもあります。
アクティブ・リスニング(積極的傾聴)
基本的に相手の話を「繰り返す」「まとめる」「心を汲む」の3つを意識して聴くことを指します。
パッシブ・リスニングと同様、「部下の言うことを否定せず、受容する」ということには変わりありませんが、アクティブ・リスニングでは部下に「分かってもらえた!」という気持ちを抱いてもらい、更に深い話までしてもらうのです。
このとき重要なポイントは、「部下の話を否定しない」と同時に、「部下の話に賛成もしない」ということです。
例えば「始業時間の15分前には来て、掃除と朝礼をすることが決まっているのに、Aさんはいつも朝礼開始ぎりぎりに来るので、他の社員だけで掃除をしているのが腹立たしいです」
と部下が言ったら、「Aさんが掃除をしてくれないので、不公平だと感じているんだね」と要約をして返します。
一緒になってAさんの悪口を言い合うのではなく、こちらはあくまで聴く側として距離を置いて話をします。そして、「どうすればAさんが掃除をするというルールを守れるかな?」と一緒に解決策を考えます。
アクティブ・リスニングを行うと、相手の言ったことを要約するのも、相手の気持ちを正確にとらえるのも、意識しないとなかなかできないということに気づくでしょう。
部下を承認しよう
「顧客訪問したときの、あの発言がよかった」といったように具体的であればあるほど良いです。また、その内容を「アイ(I)メッセージ」を使って伝えるとさらに効果的です。
「自分の要求や要望を伝える方法」には2種類あります。
1つ目は「ユー(You)メッセージ」、2つ目は、「アイ(I)メッセージ」です。
2つの違いを以下に記載します!
ユー(You)メッセージ
「書類を出しっぱなしにしないで、しっかり保管しておいてくれ」
上記の指示はユー(You)メッセージです。
「あなた(ユー)は、書類をしっかり保管しなさい」
ユー(You)メッセージは、ダイレクトに命令をしているように伝わってしまいます。人はコントロールされることが嫌いですので、命令されると反論したくなります。
「今他に急ぎでやらなければいけない仕事があって、それどころじゃないんですよ!」という気持ちになる部下もいるかもしれません。
アイ(I)メッセージ
「書類を出しっぱなしにしないで、しっかり保管しておいてくれると、私は安心できるんだよな」上記の指示はアイ(I)メッセージです。
「私は安心できるんだよ。あなたが書類をしっかり保管してくれると」
アイ(I)メッセージは、自分の気持ちや感情を述べているだけで、部下を責めることもありません。
部下にしてみれば、命令されているわけではないので、選択権が残されています。そのまま、書類を放っておいても良いし、片付けても良いのです。
そして多くの人は、命令されたわけではないのに、片付けようという気が起きます。信頼関係が構築できている部下であれば、尚更行動に移すことでしょう!
アイ(I)メッセージ法は臨床心理士のトーマス・ゴードン(Thomas Gordon)によって提唱された手法です。トーマスは1970年にP.E.T( Parent Effectiveness Training)を提唱しました。教育においては、強制したり罰を与えるよりも、建設的に話し合うことが重要であると考え、その手法の1つとしてアイ(I)メッセージ法を考案したのです。
部下の内省を促そう
内省とは、自分の考えや行動などを深くかえりみることです。近い言葉に「反省」がありますが、その違いについても記載します。
- 内省
自分の考えや行動などを深くかえりみること。 - 反省
自分の行いをかえりみること。
自分の過去の行為について考察し、批判的な評価を加えること。
反省は、良くない言動を認識して、同じ過ちを繰り返さないようにという批判的なニュアンスを含みますが、内省には批判的なニュアンスはなく、客観的に振り返ることを意味しています。
また、反省は、過去の行為について考察するのに対し、内省は「考えや行動などを深く省みる」とあるように、その言動に至った思考や感情まで含めて深く省みることを意味しています。
内省の目的は、経験を学びに変換し、次の行動に活かすことです。成長実感が低い、能力やスキルが向上していないなど、成長の停滞感を感じてしまう1つの原因は、内省ができていないためです!
1on1ミーティングでは部下に質問を投げかけることによって、内省を促しましょう。具体的には1on1ミーティングの終わりに、部下に「今日の1on1ミーティングで何を理解できた?」「何か得られたことはある?」と確認をします。
上司は「上司が意識すべきこと」を踏まえて1on1ミーティングに臨むことで新たな気づきを得られ、部下にとっても上司にとっても濃密な時間となることでしょう。
1on1ミーティングとPDCA
1on1ミーティングのポイントは「部下のための時間であること」「部下本人の成長につながること」「1対1での対話が必要であること」です。
そして、おなじみのPDCAとセットで活用することができます。
「PDCAという言葉を初めて聞いた!」という方は、以下をご覧ください。
PDCAとはPlan(計画)・Do(実行)・Check(検証)・Action(改善)のこと。このサイクルを正しくまわすことで問題が解決したり、目標が達成していく。ビジネスの現場のみならず、日常の生活にも役立つツールである。ダイエットするにも、筋トレをするにも、資格取得のための勉強にも使える考え方である。
PDCAを活用しよう
下記は1on1ミーティングの一例です。1on1ミーティングの方法に正解はありません。
試行錯誤して、改良をしていくことが重要です!
PDCAの具体例
項目 | 内容 |
---|---|
実施頻度 | 隔週1回 |
場所 | 隔離された会議室(落ち着いて対話ができる場所) |
時間 | 30分 |
テーマ | 行動目標(P) |
部下に話してもらう事(C~A) | 現状:行動目標の進捗状況(計画とのギャップ) 対策:ギャップが生じた要因の特定、その対策の具体化 再計画:対策を反映した行動目標への取り組み |
上司がすること | 基本は「聴く」「問いかける」 |
フィードバック | 内容を聴く。「どうして?」「ほかには?」などを問いかける |
1on1ミーティングの記録を取ろう
1on1ミーティングで部下と話した内容は、必ず記録を取り、業務改善や相互理解に活かしましょう。
記録をせずに対話のみでは、前回の記憶も曖昧で「何のためにやっているんだろう?」と1on1ミーティングに対するモチベーションの低下につながる可能性もあります。前回の1on1ミーティングの内容がどのように業務に活かせたか、またどの程度お互いの理解が進んだかを明確化することが重要です。
1on1ミーティングで毎回同じ話題の必要はありませんが、以前の内容を上司が忘れてしまっては、信頼関係を構築することはできません。また、上司が自分用のメモを取ることも良いですが、上司・部下がお互いに見ることができるように記録を残す方が、認識の相違を無くすことができるため、効果的です。
PDCAを回しながら、より良い1on1ミーティングをつくりあげることが、上司に求められるのです。
1on1ミーティングとは人材育成のためのミーティングメソッド
1on1ミーティングとは一言で表すと人材育成のためのミーティングメソッドです。上司と部下が1対1で行う定期的な面談で、対話を繰り返すことで問題解決や気づきによる部下の成長を促します。
1on1ミーティングは上司のためのものではなく部下のためのものです。対話の中で出てきた問題点に関して上司が回答せず、部下に考えてもらい上司は対話の壁打ち役となることがポイントです。
- 「こうしたほうがいいよ」
- 「それは違うよ」
- 「どういうふうに解決するのが良いと思う?」
- 「うんうんそれで?」
繰り返しになりますが1on1ミーティングに正解はありません。
これから1on1ミーティングを実施する上司の皆様、管理職の皆様は、あまり難しく考えすぎず、まずは実践していきましょう!