1on1ミーティングを活用する最大の目的は、部下の成長を促すことです。部下の成長は、結果的に組織全体のパフォーマンス向上につながります。
しかし、事前準備なしに1on1ミーティングを実施すれば、お互いに不利益な時間を過ごすことになってしまいます。その状態では、効果的な1on1ミーティングにはなりません。
本記事では、1on1ミーティングを実施する前にすべき準備、効果的な1on1ミーティングの進め方とポイントを解説します。
INDEX
1on1ミーティングとは
1on1ミーティングとは、人材育成を目的とした、上司と部下が1対1で行う対話(面談)のことです。
国内では、ヤフー株式会社が2012年から1on1ミーティングを開始し、上司と部下のコミュニケーションに役立てる中で貴重な成長機会となっているということで話題となり、近年1on1ミーティングを導入する企業も増えています。
しかし、1on1ミーティングを実施する中で、以下のような声も挙がっています。
- 「雑談で終わってしまい、1on1の意味がない」
- 「途中で話すことがなくなってしまう」
- 「具体的にどうやればいいのかわからない」
- 「準備が重要と言われるも、何を準備したら良いのかが分からない」
- 「何を話していいかわからず、ストレスの要因になっている」
- 「ついつい指導や指示になってしまう」
- 「部下が積極的に参加しない」
- 「1on1ミーティングを行うよりも他の重要な業務を優先したい」
1on1ミーティングが必要とされる社会的背景
近年、職場の関係性を高めるための上司と部下のコミュニケーションが急激に減ってきていると言われております。尚、組織で行われているコミュニケーションは、大きく2つに分類できます。
- 短期的な成果・目標・仕事に焦点を当てた対話
これは結果を出すための情報交換です。 - 個人に焦点を当てた対話
個人の心境、成長や将来に焦点を当てた話です。
2つ目の「個人に焦点を当てた対話」は、以前は、飲み会の場や喫煙所、会議の前後などで行われていましたが、現在はそのような偶発的な場が生まれなくなってきました。また、話す場があったとしてもセクハラやパワハラを懸念して、個人に焦点を当てて、1歩踏み込んだ話をしにくいとも言われています。
そのため、今職場で行われているコミュニケーションは、仕事を進めるための話が多くなっており、これは、コミュニケーションというより情報交換と言えます。
個人に焦点をあてた対話がないと、部下は「私はなぜこの会社で働いているのだろう」「私はこの会社で働くことが正しいのだろうか」というような疑問が生まれることがあります。そのため、意味や感情を見出す「対話」をする場が必要とされています。
1on1ミーティングの実施頻度
1on1ミーティングは、週1回ないしは月1回など定期的に実施され、部下の考え方や意見を引き出すことを目的とします。適切な頻度は、求める成果やチームの現状によってさまざまですが、少なくとも月1回、30~60分程度の時間を確保し継続して行う必要があるでしょう。
実施が不定期、あるいは間隔が開きすぎてしまうと、信頼関係の構築ができないため、オススメできません。
1on1ミーティングのデメリット
本来、1on1ミーティングを活用することで部下の成長が促進され、組織全体のパフォーマンス向上につながるのですが、デメリットを生んでしまう場合もありますので、注意が必要です。
悪い意味での「慣れ」が生じやすい
部下が上司に何でも話しやすくなる、良い意味での「慣れ」が生まれるのは問題ありませんが、悪い意味での「慣れ」が生じることもあります。ただ「部下と話す時間」になっては1on1ミーティングの意味がなくなってしまいます。
上司のコミュニケーション能力が低いと逆効果に
上司自身にコミュニケーション能力が欠如していると、一方的に話してしまったり、ついつい部下に対して指摘や指南をしてしまいます。結果として「この時間は、何の意味があるのだろう?」と部下から思われ、お互いに不利益な時間となってしまう場合もあります。
1on1ミーティングを実施する前にすべき準備
効果的な1on1ミーティングを実施するにあたり、上司が意識することや事前に上司が準備することにはどのようなものがあるのでしょうか。
普段からコミュニケーションスキルを磨いておく
1on1ミーティングとはあくまでも対話の場であり、その対話の中で主に以下3つのコミュニケーションスキルが使われます。上司は以下の3つのスキルを使い分けて対話をする必要があります。
- ティーチング
ティーチングとは、部下が知りたい得たい知識や上司の体験談・アドバイスを伝えることです。上司みずからの経験や知識を共有することで、部下を教え導きます。 - コーチング
コーチングとは、部下が経験の中から、学びを得ることです。問いかけや提案を適宜挟みながら、部下の中にある答えを引き出します。 - カウンセリング
カウンセリングとは、部下に業務や社内の人間関係の中でたまっているストレスを発散させ、精神的にスッキリしてもらうことです。部下の悩みや苦しみに寄り添い、助言や指導を通じて本人の成長をサポートします。
事前に話すテーマを決めておく
1on1ミーティングでは部下のモチベーションの低下を防ぎ、意欲的な働き方や具体的な業務の問題解決のために、以下のようなテーマを取り扱うと良いでしょう。
- 具体的な業務上の問題について
- 今後のキャリアについて
- 職場の人間関係について
- 能力開発やスキルアップについて
- 後輩の育成や社員についての相談
- 他部署との関係性について
- 競合やライバル企業の動向について
- お客様の声や動向について
- 業務を効率化するための提案
- 上司への依頼、会社への依頼
- 仕事で大切にしたい価値観
- 部下自身の強みや弱み
- 部下の強みを生かせる業務とは
- 将来的に挑戦したい仕事
効果的な1on1ミーティングの進め方とポイント
現実には1on1ミーティングを導入しても、なかなか職場に受け入れられない/定着しないケースが少なくありません。
また、うまく導入できたとしても上司側には多様なスキルが求められるため、1on1ミーティングの質が属人的になってしまうという問題もよく挙げられます。
そこで、1on1ミーティング導入時に研修を行ったり、1on1ミーティングの実施をサポートする体制を同時に整えていくことも重要です。
①1on1ミーティングのスタート時に、その場の「ゴール」を確認する
特に部下が何らかの課題を抱えている場合、「今日の1on1ミーティングが終わったときに、どういう状態になっていればいいか」という部下の期待値を最初に聞くようにすることです。
上記を行わないと、上司の期待はずれな回答によって部下からの信頼を失ったり、そもそも期待はずれなことを言ってることに上司自身が気が付かない、ということがあります。
②部下が考えを整理することを手伝う
部下が考えを整理するのを支援する姿勢で臨みます。部下の頭の中にある言葉を発言してもらい、それを上手に並べるところを手伝います。場合によっては、紙に書きながら目に見える形で図解するのも良いでしょう。そして、沈黙が訪れても静かに待ちます。
沈黙が苦手でつい話してしまう方もいますが、その時間はまさに相手が「考えている」時間か、「考え始めよう」と助走している時間かもしれません。沈黙を恐れずに勇気を持ってじっくり待つことも重要です。
③「学びの確認」を行う
「今回の件から何を学んだのか」ということを問いかけ、答えが出るように働きかけることで、部下は内省と深掘りをすることができます。「今話していて気が付いたのですが…」という形で、ふと答えが導かれることもあります。
部下が直ぐに答えを出せない場合は、所感を文書として提出させることも、部下のアウトプットと思考の整理につながるため、また上司も部下が何を感じてどのように理解したのかを把握できるため、良いでしょう。
④次の行動を決める
最後に、部下に次の行動を宣言してもらいます。「次の機会」をサポートすることもできる点で、社内で行う1on1ミーティングはメリットがあります。
そして、そのコミットが達成されなくても、否定しない・責めないでニュートラルに振り返りを行い、内省を促すことが重要です。
事前準備を怠らず1on1ミーティングに臨みましょう
1on1ミーティングの導入にあたり注意をしていただきたい点は、完璧な1on1ミーティングを求めないということです。1on1ミーティングの方法に、確固たる正解はありません。
仮に1on1ミーティングがうまくいかなかった場合、全ての要因が上司自身のスキル不足とは限りませんし、また全て部下のせいということでもないでしょう。
完璧な1on1ミーティングを目指す必要はなく、うまくいかなかった場合は「うまくいかなかった」とだけ認識し、完璧よりも「継続」を重視していきましょう。