近年、企業の中で1on1ミーティングを導入するケースが増加しています。しかし、弊社でも1on1ミーティングを行っている企業から、「ミーティングの内容が形式的になっているのではないか」という相談が増えています。
実は、1on1ミーティングを実施する前には、まず対象者である部下の気持ちを理解するために、入念な準備をすることが重要です。
INDEX
1on1ミーティングはマネジメント手法の一種
1on1ミーティングとは、上司、部下で行う定期的なミーティングを指します。発祥は、アメリカのシリコンバレーで、シリコンバレーでは既に文化として根付いています。
1on1ミーティングは職場のコミュニケーション増加を最大の目的としたマネジメント方法として、現在、日本でも注目されています。
部下の気持ちと重要ポイント
対象者である部下の立場の方へ実態や本音を確認すると、「憂鬱な30分間」とか「詰め寄られている感じがする」といったネガティブな感想が多く聞かれます。また、「忙しい時に雑談するのは時間の無駄」といった声もあります。
なんとなく1on1ミーティングが始まり、上司が「最近どう?」と聞くと、部下が「大丈夫です」と答えて、その後話が進まないことが多いようです。さらに、1on1ミーティングが業務報告や進捗確認になっているという声も多いです。しかし、仕事の進捗報告や相談は、1対1よりもチーム全体で行う方が適切でしょう。
1on1ミーティングを行うにあたり、上司も部下も、なぜそれを行うのか、どのように効果的に進めるのかを正しく把握することが重要です。
「コスパ」ならぬ「タイパ」
「Z世代」※は時間意識が非常に高く、「タイムパフォーマンス」という言葉もある程度定着しています。かつてテレビを見ていた時代は、番組の合間にCMが流れていました。
しかし、テレビからYouTubeを見る時代に変わり、CMの概念や時間が無くなってしまいました。さらに、YouTubeの動画を見る際、標準速度で見る人は年々減少しており、倍速で見る人やながら見をする人が増えています。また、スマートフォンを操作しながらYouTubeを見るなど、他の作業を同時並行で行いながら動画を見る人も増え、全てをじっくり集中して見ている人が少なくなっています。
1on1ミーティングでも、このような時間意識が反映されます。つまり、多くの人は少ない時間で多くの成果を出すことを理想としており、「タイパ」の視点からも、同様に成果が期待されます。もし1on1ミーティングにかけた時間以上の成果が得られなければ、そのミーティングは「無駄である」とされ、目的が手段化してしまい、意味をなさなくなってしまいます。
一般的に1997年から2012年の間に生まれた世代を指します。彼らはミレニアル世代の次の世代であり、現在の若者や子供たちを含みます。
上司が準備すべきこと
1on1ミーティングでは、上司が部下の話を聞くだけでなく、部下からの質問に答えられるように準備する必要があります。つまり、部下が持っている悩みや問題に対して、具体的なアドバイスや解決策を提供することが求められます。
1on1ミーティングは、準備ができていないと無駄になってしまうため、しっかりと準備をすることが必要です。
テーマ設定の具体例Ⅰ
上司は1on1ミーティング前に部下からの質問を予想し、必要な情報やデータを収集しておくことが重要です。
ここではテーマ設定の具体例を紹介していきます。
業務に関して
- 今期の業務の進め方と計画についての相談がしたい
- 業務の進捗を理解してもらい、意見や懸念点を教えて欲しい
- 来期に向けた仕事の振り返りに協力して欲しい
- 仕事の進め方を更に改善するためのフィードバックが欲しい
- 目標設定時と状況が変わったため、目標を修正したいのでアドバイスが欲しい
能力開発に関して
- 能力開発についての相談がしたい
- 社内で学ぶこと社外で学ぶことのアドバイスが欲しい
プライベートに関して
- 子どもの送り迎えがあるため、働き方を調整したい
- 体調が優れず、業務量調整の相談がしたい
上司自身に関して
- 上司の今期の目標や特に力を入れていることを聞きたい
- チームのコミュニケーションの改善について、上司がどのように考えているか聞きたい
部下自身に関して
- モチベーションアップのための方法を知りたい
- 仕事とプライベートの両立のアドバイスが欲しい
テーマ設定の具体例Ⅱ
1on1ミーティングのテーマは多岐にわたりますが、空間軸(組織レベル、個人レベル、業務レベル)と時間軸(過去、現在、未来)の2軸を活用することで、より具体的なテーマが浮かびやすくなります。
部下の現状や課題を踏まえながら、投げかけるテーマを慎重に選びましょう。
- 組織×現在:「会社の人間関係で気になることはありますか?」
- 個人×過去:「何をしているときに心から楽しいと感じましたか?」
- 個人×現在:「自分の最大の強みは何だと思いますか?」
- 個人×未来:「10年後はどんな自分でありたいですか?」
- 業務×過去:「これまで最も成功したと感じた仕事は何ですか?」
- 業務×未来:「仕事を通して何を成し遂げたいと思いますか?」
1on1研修が必要な理由
昨今、1on1ミーティングが必要になっているのかは、社会的背景からも見えてきます。
- 親の介護
- 男性の育児
- 女性の働き方
- 保育園事情
- 心の病を抱える人の増加
- 残業規制や働き方の社会問題化
- 転職市場の広がりにより、退職しやすい環境になっている
- キャリアが見えない時代で将来に不安を抱える若手社員の増加
- 職場の人と飲みに行く機会の減少
これからの時代で選ばれる会社とは、多様化・複雑化する個人の事情をしっかりと聞いて、それに適切に対応できる上司が存在する会社です。現在、企業は個人と真に対話し、共生していく時代に変化しています。
そのため、1on1ミーティングの前には「1on1研修」を実施することを強くお勧めします。上司も1on1ミーティングの準備をしてから面談に臨むことが重要です。
弊社でも「1on1研修」を提供していますので、お気軽にご相談ください。
1on1ミーティングの効果
1on1ミーティングを実施する前に、部下の気持ちを理解することや入念な準備をすることが重要だと述べました。
準備をして臨む1on1ミーティングには、以下のような効果があります。
- 部下と上司の間に信頼関係が生まれる
- 心身の不調を抱えていた部下が、早期対策でイキイキ働けるようになる
- やる気のなかった部下が自発的に働くようになる
- 評価査定の後に不機嫌になる部下がいなくなる
- 仕事に飽きてきた優秀な部下が、再び情熱をもって業務に取り組むようになる
- 突然の退職がなくなる
以上をふまえて、1on1ミーティングの重要性を理解し、有効活用していきましょう。