マネージャーに求められる1on1とマネジメントの方法

マネージャーに求められる1on1とマネジメントの方法

近年、働き方の多様化・ダイバーシティ化が進んでいます。リモートワーク、時短勤務、外国人雇用、育児・介護との両立など、様々な働き方やライフスタイルの人材とともに働き、組織を成長させていくことが、マネージャーの重要な業務の1つとなりました。

その上で、マネージャーが1on1の意義・目的を正しく理解し、組織の成長につながるように部下の成長を促すことは重要です。

本記事では、マネージャーに求められる1on1とマネジメントの方法について記載します。本記事を読むことで1on1のポイントが理解できるので、職場での1on1の実施がより円滑かつ効果を発揮するようになるでしょう。

ミーティングの種類と実施目的

日々の業務の中でミーティングは頻繁に行われます。例を挙げると、朝礼など、部署ごとに毎日実施するようなミーティング、週次で実施するような定例ミーティング、顧客とのプロジェクトミーティングなどがあります。

ミーティングを有意義な時間にするには、ミーティングの目的やミーティングの中で何を実施しなければいけないのか、どのような準備が必要なのかを参加者が正しく理解して臨むことが重要です。

  • プロセス重視のミーティング
  • 使命重視のミーティング

ミーティングは大きく2種類に大別でき、知識の共有化や情報の交換を目的とした「プロセス重視」のミーティングと、具体的な問題解決を目的とした「使命重視※」のミーティングがあります。

使命重視※

使命重視とは経営理念・経営方針・フィロソフィー・クレド・ウェイなどに基づき、問題解決を図ることを指します。

プロセス重視のミーティング

①1on1ミーティング

  • 内容
    マネージャーと部下の間のミーティング
    部下のためのミーティング
  • 目的
    相互に教えたり、情報を交換すること
  • ミーティングの構成・議題
    部下が直面していることや困っていること

②スタッフミーティング

  • 内容
    あるマネージャーとその部下全員が参加する部署会議
  • 目的
    同僚相互の交流、マネージャーが物事を知る機会
  • ミーティングの構成・議題
    出席者3人以上に関係する任意の事項

③業務検討会

  • 内容
    相互に話し合う機会があまりない人々のための意見交換の場、手段
  • 目的
    組織階層が離れていて交流のない社員間で教育と学習を継続させようとするもの
  • ミーティングの構成・議題
    上級の管理者がプレゼンを実施

使命中心重視のミーティング

  • 内容
    部署や役職に関係無く、定められた目的・到達地点に向かって、計画的に実施するミーティング
     (例)経営理念浸透プロジェクトミーティング、企業行動指針に基づく検討会
  • 目的
    特定の成果、一定の意思決定に到達すること
  • ミーティングの構成・議題
    都合をつけて関係者を確実にミーティングに参加させる

このようにミーティングには種類と実施目的がありますので、まずはマネージャーが各種ミーティングの実施目的を理解することがポイントです。

1on1ミーティングでマネージャーが工夫すべきこと

1on1ミーティングでマネージャーが工夫すべきこと

1on1ミーティングの主役は部下です。1on1ミーティングは部下が行っている業務や抱えている心配事などについて相談するための機会です。マネージャーが1on1ミーティングで工夫すべきポイントをご紹介します。

  • メモに残す
  • 「保留」ファイルを作る
  • 本を1冊読み込む
  • 日頃から部下の思考や行動を注視する

是非ご参考ください。

メモに残す

話した内容を論理的に消化する助けになるため、メモに残しておきましょう。

「保留」ファイルを作る

「保留」ファイルを作り、「重要だが緊急でないもの」を次回のミーティングで討議するよう書き溜めておきましょう。

本を1冊読み込む

マネージャーが1on1についてあまり理解せずに実施しているケースも多いです。1on1について書かれた書籍を1冊読み込んでから、1on1ミーティングに臨みましょう。

日頃から部下の思考や行動を注視する

1on1ミーティングの場だけでなく、日頃から部下が何を考えて行動しているのか、何に興味関心を持っているのか、など意識的に確認していきましょう。

一言メモ

多くの人が「重要ではないが緊急なもの」に時間を使っていますが、大事なことは選択と集中です。「重要だが緊急でないもの」は効果的なパーソナル・マネジメントの鍵を握る領域であるため、書き留めておきましょう。

1on1を通じて行うマネジメント

動機づけと欲求

人が仕事をしない理由は2つだけあります。1つは能力が伴わないから、もう1つは意欲がないからです。部下の現状を把握する上で、このどちらであるか見分けるために、以下の質問をしてみましょう。

仕事をしない理由を判別する質問
  • 「生活がかかっているとすれば、その仕事ができますか?」

モチベーションはその人間の内部から発するものです。外部から「やる気を起こさせる」のは極めて難しいのが現状です。

そう考えると、マネージャーにできることは、外部から働きかけつつ、環境を整えることです。望むアウトプットはあくまで【遂行業績の向上】です。つまり、「やる気が起きた」はせいぜいモチベーションを測定するための一つの指標でしかありません。

マズローの欲求5段階説

有名な理論に、「マズローの欲求5段階説」があります。「マズローの欲求5段階説」とは、心理学者アブラハム・マズローが「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、人間の欲求を5段階に理論化したものです。人間には5段階の「欲求」があり、1つ下の欲求が満たされると次の欲求を満たそうとする基本的な心理的行動を表しています。

マズローの欲求5段階説

自己実現理論(Wikipediaより引用)

マズローの理論では、モチベーションは欲求から生じる、欲求の中でも強いものがモチベーションを決定すると言われています。

つまり、自己実現を推し進める力と、それを助成するマネジメントが重要です。

自己実現を推し進める力
  • 自身の能力向上への欲求
    目標を高く設定(例:頑張っても達成できるかは五分五分)
自己実現を助成するマネジメント
  • 達成意欲
    アウトプットを評価・強調する環境づくり(例:良い調べ物をする人ではなく、 具体的なアウトプットを出す人を評価)

金銭の位置付け

低階層の欲求においては金銭は重要ですが、ある程度満たされるとモチベーションの役割を果たしません。自己実現を充分発揮しているような人にとっては、金銭は「いくら稼げるか」という達成度の尺度に過ぎないのです。

マネージャーがすべきことは、部下にトレーニングを実施し、動機付けを高階層まで引き上げることです。自己実現段階に達すれば、モチベーションは自給自足で無限に湧いてくるものです。

一言メモ

部下にトレーニングを実施するためには、マネージャーも自分自身をマネジメントしなければなりません。

部下のタスク習熟度に応じたマネジメント

部下のタスク習熟度に応じたマネジメント

また、マネジメントは部下の習熟度によって調整することが重要です。習熟度が低い場合、中程度の場合、高い場合について、それぞれどのように異なるのか、見てみましょう。

  • 習熟度が低い場合
    何をいつどのようにやるのか、正確で詳細な指示を与える。
  • 習熟度が中程度の場合
    コミュニケーションや情緒的な支持・激励など、仕事よりも個人としての部下に注意を払う。
  • 習熟度が高い場合
    マネージャーとしての関与を最小限に抑え、部下との間で目標に関して合意する。仕事を委任するために必要なことは、部下との間で価値観を共有することである。

習熟度が低い場合には、明確に細かく指示を出し、タスク習熟度が高い場合は関与を最小限にします。部下の習熟度が高いほど、マネージャーは時間を使わずに済むので、部下の習熟度を伸ばすことはマネージャーの非常に大切な仕事です。

おすすめポイント

部下の習熟度を伸ばすためには1on1ミーティングとトレーニングが重要です。経験が少ない部下には1on1ミーティングを頻繁に実施し、経験に富んだ中堅社員であれば回数を減らすといった調整をしましょう。

マネージャーのすべき仕事

極端な話、マネージャーのすべきことは部下の教育と、部下のモチベーション向上のみで、他にすべきことはないとも言えます。

その際、部下に対して「失敗を経験させる必要がある、そうして次第に覚えていく」という思考を排除する必要があります。それは部下の成長にかかる組織として負担するコストを顧客に負担させているに等しいからです。

また、マネージャーの仕事には終わりがありません。すべき仕事、しなければならない仕事、なし得る以上の仕事が常に控えています。故に、マネージャー自身は、常にアウトプットを最大化できる部分にエネルギーと注意を注ぐべきです。

マネージャーの責任

マネージャーの最も重要な責任は、部下から最高の業績を引き出すことです。より重要なのは、部下の習熟度に合わせたマネジメントができているかどうかです。

習熟度が低い部下に最も有効な手法は、正確で詳細な指示をし、何をいつどのようにやるか指示して行わせることです。習熟度が高くなれば効果的なマネジメントスタイルも変わり、マネージャーの介入を少なくしつつ、目指す目標は常に合意しているか確認して進めていくことが重要です。

注意ポイント

委任と放棄は全く違います。介入は減らせども、モニタリングは続け、効果的に介入するのが求められる姿です。

そして部下に対するトレーニングは、突発的なものであってはなりません。系統的かつ予定を立てることが必要です。マネージャーは、部下に教えたいことリストを作り、教材や講師を探します。継続と改良が重要ですので、教材や講師は1つに絞らず自部署・自社に適した内容にしていきましょう。

アウトプット内容による成果で評価

アウトプット内容による成果で評価

冒頭で、働き方の多様化・ダイバーシティ化が進んでいると述べましたが、企業の業績を大きく左右するのはマネージャーの活動であり、その活動の根底は時代が変わってもさほど変わりません。寧ろ、経営環境が目まぐるしく変化する現代こそ、マネージャーの役割は重要であると考えます。そのために、以下の3点を念頭に置いて、1on1ミーティングにも臨みましょう。

  1. マネージャーは、マネジメントに対する成果(アウトプット)志向にする。
  2. マネージャーのアウトプットとは、「マネジメント下にある組織体のアウトプットである」と認識して活動する。
  3. チームのメンバーが、最高の業績遂行活動を導き出せるようにする。
    そのために、グローバル化や情報革命などの予測不可能な変化に対応できる、エネルギッシュで能率の良いチームを形成する。

つまり、マネージャーが意識しなければならないことは、「1on1ミーティングの実施が目的ではなく、部下の習熟度を伸ばすために1on1ミーティングとトレーニングを実施し、マネジメント下にある組織体のアウトプットの質を向上させること」です。

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