オンライン研修を実施する際には、効果的な学習環境を提供し、受講者が最大限の利益を得るためにいくつかのポイントがあります。
本コラムでは、オンライン研修の手順とポイントを記載します。
INDEX
オンライン研修とは
オンライン研修とは、PCやタブレット、スマートフォンをインターネット回線につないで参加する研修です。ここでは、双方向・リアルタイムコミュニケーション型のオンライン研修をオンライン研修と呼ばせていただきます。
コロナ禍でZoomを活用して行われる機会が増えた研修形式です。技術革新が進むにつれて操作や速度などへのストレスが減り、対面型の環境に近づきつつあります。現在では研修だけでなく、商談でも対面型に変わるものとして取り入れられています。
オンライン研修と対面研修の使い分け
当たり前のように続いたオンライン研修も、そろそろ使い分けが必要でしょう。演習を伴わない研修であれば、オンラインでも、期待する効果を得ることはできます。但し、受講者が共同作業で、その場での成果物を求められる研修をオンラインで行うことは難しいのが現状です。
弊社でも、オンラインでグループディスカッションを実施し、その成果を整理してまとめ、発表して共有するという演習を研修に取り入れることが多くありますが、対面研修の場合と比較して双方向でのリアルタイムな議論の掛け合いができず、まとまりに欠ける印象があります。
講師が知識を提供し、受講者がこれを受け取る一方通行型の研修であれば、このような状況でも問題ありませんが、創造的成果物を生みだすための研修であれば、これができないことは、致命的です。
このようにオンライン研修にはメリットもありますが、デメリットもあります。つまり、今後は「使い分け」や「受講前に受講者にどのような働きかけをする必要があるのか」が非常に重要であると考えます。
「オンライン研修は自社には合わない」と諦めてしまうのではなく、時代の変化に適合し、効率と効果を追究していくことが、企業には求められるでしょう。本コラムでは、世界と比較した日本の課題から、オンライン研修の実施ポイントまで述べていきます。
日本のデジタル競争力は低下
(出典)IMD 「World Digital Competitiveness Ranking 2022」
デジタル競争力ランキング2023で、日本は63カ国中32位と低迷しています。特に「人材/デジタル・技術スキル」が、62位と低く、これが全体を引き下げる要因になっています。
また、日本では76%の企業がDX人材不足を感じている(米国は43%)にも関わらず、社員の学び直しを全社的に実施している企業はわずか7.9%です(米国は37.4%)。社員の学び直しを検討さえしていない企業が過半数近く存在しているというのが実態です(米国は10%未満)。
DX推進の課題は人材不足と社内育成体制の未整備
(出典)総務省(2022)「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」
情報通信白書(2022)における企業約3,000社への調査によると、デジタル化を進める上での課題・障壁として、日本企業は「人材不足(67.6%)」の回答がありました。これは米国・中国・ドイツの3か国に比べて非常に多い結果が出ています。
各国の企業でデジタル人材が不足する理由については、日本企業においては、両デジタル人材に共通して「デジタル人材を採用する体制が整っていない」と「デジタル人材を育成する体制が整っていない」が約40%と多い結果となりました。
何故ビジネスパーソンにDXリテラシーが必要か
社会環境・ビジネス環境の変化に対応するために、企業・組織を中心に社会全体のDXが加速する中で、人生100年時代を生き抜くためには、働き手一人ひとりが状況に合わせて学び続けることが重要です。
DXリテラシーは、働き手一人ひとりが、自身の日常生活や仕事の場でこのような取り組みの成果を享受するために実施する内容です。DXリテラシーを身に付けることで、働き手一人ひとりが、DXを自分事ととらえ、変革に向けて行動できるようになります。
DXについても今一度定義をおさらいしましょう。経済産業省では以下のように定義しています。
経済産業省によるDXの定義
DXの定義 | ポイント |
---|---|
DXとは、企業が | |
ビジネス環境の激しい変化に対応し、 | 環境変化の中でも、企業が市場で淘汰されずに、成長し続けることが目的 |
データとデジタル技術を活用して、 | デジタルツールの導入=DXではなく、データやデジタル技術はあくまで変革のための手段 |
顧客や社会のニーズを基に、 | デジタルを使った製品やサービスを提供するだけでなく、データやデジタル技術を活用したプロセスの改善や、デジタルを活用しやすい組織づくりへの取り組みが必要 |
製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、 | |
競争上の優位性を確立すること | 環境変化の中でも、企業が市場で淘汰されずに、成長し続けることが目的 |
である。 |
以下にDXリテラシーがビジネスパーソンにとって重要な理由をまとめます。
DXリテラシーがビジネスパーソンにとって重要な理由
No. | テーマ | 内容 |
---|---|---|
1 | 競争力の向上 | ビジネス環境は急速に変化しており、デジタル技術を活用できる組織が競争力を獲得します。DXリテラシーがあるビジネスパーソンは、新たなテクノロジーの導入や活用を通じて効率を向上させ、市場競争で優位に立つことができます。 |
2 | 効率と生産性の向上 | DXは業務プロセスの効率化や自動化を可能にします。ビジネスパーソンがDXリテラシーを持っていれば、デジタルツールやプロセスを適切に活用し、業務の生産性向上に貢献できます。 |
3 | イノベーションの推進 | DXリテラシーがあると、新しいテクノロジーやデジタルプラットフォームを理解し、それをビジネスに取り入れることができます。これにより、組織全体でのイノベーションが促進され、新しいビジネスモデルやサービスが生まれる可能性が高まります。 |
4 | 柔軟性と適応力の向上 | ビジネス環境の変化に迅速かつ柔軟に適応するためには、DXリテラシーが重要です。新しいテクノロジーに適応できるビジネスパーソンは、変化に対応するスピードが速く、柔軟性を発揮できます。 |
5 | データ駆動の意思決定 | DXは多くのデータを生成し、これを分析して意思決定に活用します。DXリテラシーがあるビジネスパーソンは、データを理解し、分析して得られた情報をもとに戦略的な意思決定を行うことができます。 |
6 | 顧客体験の向上 | デジタル技術の活用により、顧客とのコミュニケーションやサービス提供が向上します。DXリテラシーを持つビジネスパーソンは、顧客とのデジタルな接点を強化し、顧客体験を向上させることができます。 |
これらの理由から、ビジネスパーソンがDXリテラシーを持つことは、現代のビジネス環境で成功するために重要だと言えるでしょう。
また、No.2にあるように、「効率と生産性の向上」のためにはオンライン研修の普及は画期的な手法の1つと言えるでしょう。
オンライン研修の手順とポイント
Zoomを活用した場合のオンライン研修の手順とポイントについて記載します。
Zoomを活用した場合のオンライン研修の手順とポイント
No. | テーマ | 内容 |
---|---|---|
1 | 事前の計画と設定 | 研修の目的や内容を明確にし、Zoomで使用する機能やツールを検討します。 研修の日程や時間を事前に調整し、受講者に通知します。 必要な資料やリソースを事前に共有するなど、受講者が準備できるようにします。 |
2 | Zoomミーティングの設定 | Zoomアカウントを作成し、ミーティングを設定します。 セキュリティ設定を確認し、必要に応じてパスワードやミーティングルームの制限を設定します。 ミーティングIDや招待リンクを受講者に提供します。 |
3 | 受講者へのトレーニング | Zoomの基本的な使い方や機能についてのトレーニングを受講者に提供します。 ミーティングへの参加方法やツールの使い方、画面共有などについて説明します。 |
4 | アクティブな参加促進 | ビデオをオンにすることや、チャットを活用して受講者同士のコミュニケーションを促進します。 質問やディスカッションの機会を設け、受講者が積極的に参加できるようにします。 |
5 | 対話とフィードバック | 対話を重視し、受講者の質問や疑問に答えるとともに、ディスカッションを通じて学びを深めます。 定期的にフィードバックを収集し、研修の改善点を洗い出します。 |
6 | 録画と資料の提供 | 研修を録画し、後で復習できるようにします。 資料や関連リンクを受講者に提供し、追加の情報やリソースにアクセスできるようにします。 |
7 | アンケートや評価 | 研修終了後にアンケートを行い、受講者の意見や感想を収集します。 研修の効果や改善点を把握し、次回の研修に生かすための評価を行います。 Zoomを活用した研修は、柔軟性があり多くの場所から参加できる利点がありますが、受講者の注意を引きつける工夫や対話を促進する配慮が求められます。 |
受講者へのトレーニング
特に重要な点が、No.3の「受講者へのトレーニング」です。受講者が研修に効果的に参加できるようにするための準備が重要です。
以下のようなトレーニングを取り入れることを推奨します。
受講者へのトレーニングと内容
No. | テーマ | 内容 |
---|---|---|
1 | 技術トレーニング | オンライン研修を受けるために必要なテクニカルスキルやプラットフォームの使い方に関するトレーニング。これにはビデオ会議ツールの使用法、オンライン教育プラットフォームのナビゲーション、基本的なデジタルスキルが含まれます。 |
2 | 事前読書や資料の提供 | 研修前に受講者に提供される資料や関連する読書課題。これにより、研修が始まる前に基本的な概念や知識を理解し、授業やワークショップにより深めることができます。 |
3 | 自己評価や事前テスト | 受講者が現在の知識やスキルを評価するための自己評価や事前テスト。これにより、研修の初めに個々の受講者のレベルを理解し、適切な教育内容を提供することが可能になります。 |
4 | コミュニケーショントレーニング | オンライン環境での効果的なコミュニケーションスキルのトレーニング。これは、ビデオ会議での参加、ディスカッションへの参加、質問の仕方などが含まれます。 |
5 | オンラインリソースへのアクセス情報 | 研修中に使用するオンラインリソースや教材にアクセスする方法に関するトレーニング。これには特定のプラットフォームへのログイン方法やファイルのダウンロード手順などが含まれます。 |
これらの事前トレーニングは、受講者がオンライン研修により効果的に学ぶことにつながります。
有意義なオンライン研修を行うために事前準備をしよう
オンライン研修は、参加者が会場に行く必要がないため、より参加しやすくなります。特に意欲が高い場合、オンライン研修は非常に効果的です。そのためには、主催者側が事前課題を準備し、参加者が研修に効果的に参加し、学びを最大化するための工夫が必要です。
事前課題は、研修の性質や目的に応じて変わりますが、関連する記事を読むこと、ディスカッションの準備、プロジェクトやケーススタディの分析などが、充実した研修に役立ちます。
参加者は、研修に関連する動画や記事を視聴・読書し、事前に基本概念を理解しやすくするための質問やメモを準備するとよいでしょう。また、予定されているディスカッションやグループワークに備えて、事前に提供された資料やプロジェクト、ケーススタディを分析し、それに基づくディスカッションや演習に備えることは、有意義な学習体験に繋がります。